感染が産生に関与したと考えられた抗Pr-a抗体, 抗H抗体の各一例

それぞれ風疹感染後, あるいはS.pneumoniae肺炎合併時に検出された稀な抗Pr-a抗体, 抗H抗体の各一例を経験した. 抗赤血球抗体の産生機序を考える上で興味ある症例と考えられたので報告する. 症例1:24歳, 男性. 主訴は発熱, 発疹, 褐色尿で, 黄疸, リンパ節腫脹, 脾腫を認めた. GOT 60, GPT 30, LDH 2048(U/L), T-Bil 1.7, D-Bil 1.7(mg/dl), ハプトグロビン欠損, 寒冷凝集反応2048倍以上, 風疹抗体(IgM-c)6.64倍陽性で, さらに寒冷凝集素の特異性を精査の結果, O型成人血球, O型臍帯血球, O型成人i血...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 37; no. 2; p. 312
Main Authors 大久保進, 宮本厚子, 石田萠子, 安永幸二郎, 門田洋一, 藤並滋, 井上恭一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.03.1991
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ISSN0546-1448

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Summary:それぞれ風疹感染後, あるいはS.pneumoniae肺炎合併時に検出された稀な抗Pr-a抗体, 抗H抗体の各一例を経験した. 抗赤血球抗体の産生機序を考える上で興味ある症例と考えられたので報告する. 症例1:24歳, 男性. 主訴は発熱, 発疹, 褐色尿で, 黄疸, リンパ節腫脹, 脾腫を認めた. GOT 60, GPT 30, LDH 2048(U/L), T-Bil 1.7, D-Bil 1.7(mg/dl), ハプトグロビン欠損, 寒冷凝集反応2048倍以上, 風疹抗体(IgM-c)6.64倍陽性で, さらに寒冷凝集素の特異性を精査の結果, O型成人血球, O型臍帯血球, O型成人i血球に強陽性で, 蛋白分解酵素処理血球には弱陽性, ニュラミニダーゼ処理血球には強く反応したことなどから抗Pr-a抗体と同定, 風疹感染後の寒冷凝集素症(抗Pr-a抗体)による溶血性貧血と診断した. Hbは14.1から4.6(g/dl)と低下したが, 副腎皮質ステロイド薬の投与により, Hb 13.2, LDH 280, 寒冷擬集反応64倍と改善した. 成人における風疹感染後の寒冷凝集素症は少なく, とくに抗Pr-a抗体出現例は稀である. 症例2:44歳, 男性, A1型Rh(D)陽性, 悪性リンパ腫. 輸血歴なし. S.pneumoniae肺炎合併時に, 生理食塩水法・室温1:64, アルブミン法・37℃1:4, 抗グロブリン法1:32, 抗IgG血清でも反応する抗H抗体が検出された. またこの抗体は, 2ME処理後も活性を示したことからIgM+IgG抗体と考えられ, そのIgGサブクラスはIgG1+2であった. 抗菌化学療法で肺炎が軽快するに伴い抗体価も下がり1:1となった. 本例では, S.pneumoniaeが抗H抗体の産生源になった可能性, また基礎疾患による免疫機能異常が通常では寒冷抗体である抗H抗体の性状の変化に関与していた可能性も否定できないと考えられた.
ISSN:0546-1448