未熟児早期貧血に対する輸血
排卵誘発や体外受精など, 不妊治療の進歩, 普及に伴って多胎妊娠や早期産が増加し, その結果, 未熟児の出生が増加している. これら未熟児では, エリスロポイエチン(Epo)産生臓器が, 低酸素刺激に対する閾値が低い腎外組織にシフトしているため, Hb値が成熟児より2~3g/dl低下しないとEpoの十分な産生が起こらない. 加えて未熟児とくに極小未熟児は合併症に対する血液検査の機会が多く, 貧血をきたしやすい. 近年, 遺伝子組換え手法によるEpo製剤が開発され, 未熟児貧血の治療にも導入されているが, なお, 超未熟児を中心に早期貧血に対して輸血が必要となる機会は稀ではない. ところが, こ...
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          | Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 40; no. 2; p. 284 | 
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| Main Authors | , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            日本輸血学会
    
        01.05.1994
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| ISSN | 0546-1448 | 
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| Summary: | 排卵誘発や体外受精など, 不妊治療の進歩, 普及に伴って多胎妊娠や早期産が増加し, その結果, 未熟児の出生が増加している. これら未熟児では, エリスロポイエチン(Epo)産生臓器が, 低酸素刺激に対する閾値が低い腎外組織にシフトしているため, Hb値が成熟児より2~3g/dl低下しないとEpoの十分な産生が起こらない. 加えて未熟児とくに極小未熟児は合併症に対する血液検査の機会が多く, 貧血をきたしやすい. 近年, 遺伝子組換え手法によるEpo製剤が開発され, 未熟児貧血の治療にも導入されているが, なお, 超未熟児を中心に早期貧血に対して輸血が必要となる機会は稀ではない. ところが, これまで未熟児早期貧血に対する輸血のガイドラインは明確にされていなかったため, 小児輸血療法研究会では(1)呼吸障害およびうっ血性心不全が認められない, (2)出生時体重2000g以下, (3)輸血施行時の日(月)齢が28生日以降4生月まで, (4)輸血前のHb値が8.0g/dl未満あるいはHb値8.0g/dl以上10.0g/dl以下でかつ貧血によると考えられる臨床症状が認められる症例を対象として, 至適輸血量, 至適輸血速度, 輸血効果, 輸血の副作用などについて検討した. とくに輸血量と輸血速度については, 10ml/kgの赤血球濃厚液を5~10時間かけて輸血する群(A群)と15-20ml/kgの赤血球濃厚液を10-20時間かけて輸血する群(B群)に分けて, 予備的な比較対照試験を実施したところ, B群では輸血回数が減少し, また, 輸血再施行症例の再輸血までの日数が有意に延長した. 一方, 輸血前後での網状赤血球数, 呼吸数, 心拍数, 体重増加量, 再輸血施行率には有意差が認められなかった. それらの成績を受けて, 現在さらに症例数を増やして輸血量, 輸血速度, 輸血効果, 輸血副作用について検討中であるのでその成績を合わせて報告する. | 
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| ISSN: | 0546-1448 |