HBV母児感染防禦を目的としてHBIG, HBワクチン投与中に肝機能異常をきたした2症例
我々は, 抗HBヒト免疫グロブリン(以下HBIG)及び, HBワクチン併用によるB型肝炎ウィルス母児垂直感染防禦の治験を, 過去3年間にわたり, 充分な説明の結果同意の得られた14例に対して行なって来た. この中で2例に, 明かな肝機能異常をみたため, その経過を報告した. 治療のプロトコールは東京都臨床医学総合研究所のそれに準じた. 症例1:在胎週数38週, 出生時体重2,830g Apgar 9点で出生, 出生当日, HBIG(F(ab)_2 )150mgi.v.翌月, HBIG200単位i.m.した. 父親はe抗体陽性の無症候性キャリアであり, 2歳の兄は, e抗原陽性の無症候性キャリア...
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          | Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 30; no. 3; p. 213 | 
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| Main Authors | , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            日本輸血学会
    
        01.07.1984
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| ISSN | 0546-1448 | 
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| Summary: | 我々は, 抗HBヒト免疫グロブリン(以下HBIG)及び, HBワクチン併用によるB型肝炎ウィルス母児垂直感染防禦の治験を, 過去3年間にわたり, 充分な説明の結果同意の得られた14例に対して行なって来た. この中で2例に, 明かな肝機能異常をみたため, その経過を報告した. 治療のプロトコールは東京都臨床医学総合研究所のそれに準じた. 症例1:在胎週数38週, 出生時体重2,830g Apgar 9点で出生, 出生当日, HBIG(F(ab)_2 )150mgi.v.翌月, HBIG200単位i.m.した. 父親はe抗体陽性の無症候性キャリアであり, 2歳の兄は, e抗原陽性の無症候性キャリアである. 生後4ヵ月目までは, 喘乳量が幾分少なく, 成長の遅れがみとめられたが, 発達は正常域であった. 生後2ヵ月目にHBIG i.m. 3ヵ月目にはHBワクチン(adj. (-))s.c. 4ヵ月目には, HBIG i.m.とHBワクチンs.c.を実施した. 生後5ヵ月目, 発熱と咽頭発赤をみとめ, この時, GOT95IU/リットル, GPT84IU/リットルと, 肝機能異常がみとめられた. その後, GOT449IU/リットル, GPT693IU/リットル, LDH634IU/リットルをピークとして, 1歳を過ぎた現在も肝機能異常の寛解増悪を繰り返している. HBsAb, HBcAbの推移からは, HBsAgに対する能動免疫が獲得されており, HBVの感染は否定的である. 同時期, 母親の肝機能検査は異常なかった. 症例2:在胎週数38週, 出生時体重2,842g Apgar 9点で出生. 出生当日HBIG(F(ab)_2 )i.v. 翌日HBIG i.m.. 父親はHBsAg(-), 4歳の姉はe抗原陽性の気症候性キャリアである. 生後2ヵ月目にHBIG i.m.3ヵ月目にHBワクチン(adj(+))s.c.. 生後4ヵ月目に, 哺乳後に軽度の吐乳をみたが, 身体所見は異常なかった. しかし, この時点でGOT 181IU/リットル, GPT 110IU/リットルと高値を呈し, 現在経過観察中である. 2症例とも現在までのところ, 原因不明であるが, 今後このような症例の詳細な検討により, 最小の投与量で, 有効かつ安全な投与法の確立がのぞまれる. | 
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| ISSN: | 0546-1448 |