胸部X線上じん肺大陰影が急速に増大したコークス製造工の一例

症例は, 約20年間コークス製造に従事した60歳男性, 主訴は軽度息切れと粘性痰. 現病歴はじん肺健診で胸部X線上4型Cに相当する大陰影が認められ, しかも急速に増大しているとのことであった. 症例が従事したのは, 粉末コークスの袋詰め作業で, 作業は自動化されているが, 設備が老朽化しており, 発塵が見られた. 粉塵濃度は0.19~0.35mg/立方メートル(A測定)であった. 粉塵の成分は殆どが炭素で, 珪酸含有率は2%とのことであった. 防塵マスクは支給されているが, 装着していなかったようである. 気管支鏡検査, 喀痰細胞診検査などの諸検査では, じん肺症以外の疾病は認められなかった....

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Published in産業衛生学雑誌 Vol. 40; no. 2; p. 49
Main Authors 五藤雅博, 宇佐美郁治, 黒木秀明, 佐藤滋樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本産業衛生学会 20.03.1998
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ISSN1341-0725

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Summary:症例は, 約20年間コークス製造に従事した60歳男性, 主訴は軽度息切れと粘性痰. 現病歴はじん肺健診で胸部X線上4型Cに相当する大陰影が認められ, しかも急速に増大しているとのことであった. 症例が従事したのは, 粉末コークスの袋詰め作業で, 作業は自動化されているが, 設備が老朽化しており, 発塵が見られた. 粉塵濃度は0.19~0.35mg/立方メートル(A測定)であった. 粉塵の成分は殆どが炭素で, 珪酸含有率は2%とのことであった. 防塵マスクは支給されているが, 装着していなかったようである. 気管支鏡検査, 喀痰細胞診検査などの諸検査では, じん肺症以外の疾病は認められなかった. 血清検査でRAが149U(0~14)と高値を示した. 関節リウマチの症状は認められなかったが, 大陰影が急速に増大する型のCaplan症候群である可能性が考えられ, 今後さらに経過観察する予定である.
ISSN:1341-0725