竹村論文に対するEditorial Comment -精神科疾患患者と静脈血栓塞栓症

2004年春に「肺血栓塞栓症予防管理料」が新設され, さらに関連する10学会, 研究会が関与した「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン1)」が発刊された. しかし, 同予防管理料の対象は一般病棟入院中の患者に限られ, 精神科病棟の患者は対象外である. また, 予防ガイドラインでは精神科疾患患者に関する記載はなく, これは欧米のガイドラインでも同様である2). 従来, 精神科疾患に静脈血栓塞栓症が合併しやすいことが指摘され, 最近も報告が増えている3). 精神科疾患は, 抗精神病薬が凝固能亢進に働く可能性に加え, 抗精神病薬や疾患そのものによる活動性低下, 食欲低下や精...

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Published in心臓 Vol. 38; no. 7; pp. 719 - 720
Main Author 中村真潮
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団 15.07.2006
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ISSN0586-4488

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Summary:2004年春に「肺血栓塞栓症予防管理料」が新設され, さらに関連する10学会, 研究会が関与した「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン1)」が発刊された. しかし, 同予防管理料の対象は一般病棟入院中の患者に限られ, 精神科病棟の患者は対象外である. また, 予防ガイドラインでは精神科疾患患者に関する記載はなく, これは欧米のガイドラインでも同様である2). 従来, 精神科疾患に静脈血栓塞栓症が合併しやすいことが指摘され, 最近も報告が増えている3). 精神科疾患は, 抗精神病薬が凝固能亢進に働く可能性に加え, 抗精神病薬や疾患そのものによる活動性低下, 食欲低下や精神運動興奮に伴う脱水状態, 過食による肥満, さらにやむをえない身体拘束など, 静脈血栓塞栓症の危険因子に常にさらされている. このような状態に気道や尿路の感染が加われば, 血栓リスクは一般病棟患者に劣らぬ非常に強いものとなる.
ISSN:0586-4488