当科の唇顎口蓋裂におけるHotz床の使用経験

Hotz型人工口蓋床(以下Hotz床と略す)は, 硬・軟性レジンの二重構造により作製される顎矯正装置で, Hotzらは, 唇顎口蓋裂児に出生直後よりHotz床を装着することにより, 顎口腔機能を改善し, また哺乳を容易にし, 顎発育を良好に誘導しうると報告している. 今回, われわれは, 当科の唇顎口蓋裂におけるHotz床の使用経験ならびにHotz床使用者アンケート調査を行い, その結果を加味し, 若干の知見を得たので報告する. 対象は, 1985年9月より1991年10月までの間に当科を受診した唇顎口蓋裂児のうち哺乳障害を認めるか, 哺乳障害を生じる可能性のある52症例であった. そのうちわ...

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Published in小児口腔外科 Vol. 2; no. 1; p. 92
Main Authors 村井睦彦, 松下文彦, 鈴木浩之, 藤巻元, 鈴木徹, 新美学, 橋本賢二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児口腔外科学会 01.05.1992
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ISSN0917-5261

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Summary:Hotz型人工口蓋床(以下Hotz床と略す)は, 硬・軟性レジンの二重構造により作製される顎矯正装置で, Hotzらは, 唇顎口蓋裂児に出生直後よりHotz床を装着することにより, 顎口腔機能を改善し, また哺乳を容易にし, 顎発育を良好に誘導しうると報告している. 今回, われわれは, 当科の唇顎口蓋裂におけるHotz床の使用経験ならびにHotz床使用者アンケート調査を行い, その結果を加味し, 若干の知見を得たので報告する. 対象は, 1985年9月より1991年10月までの間に当科を受診した唇顎口蓋裂児のうち哺乳障害を認めるか, 哺乳障害を生じる可能性のある52症例であった. そのうちわけは, 両側性唇顎口蓋裂5例, 片側性唇顎口蓋裂32例, 唇顎裂6例, 口蓋裂9例だった. 印象採得は初診時にあらかじめ用意されたオストロン製トレーを用いて行い, 1~3日後に装着した. 装着後入院させ, Hotz床の調整を行うとともに哺乳量が十分であることを確認し, また, 哺乳後の口腔内及びHotz床の清掃を指導し退院させた. 入院期間は0~20日で平均3.6日だった. 歯の萌出や顎の発育に伴ってHotz床の調整や再作製を適宜行なった. Hotz床装着1週間後に再診させ, 哺乳および発育状態を観察するとともに調整を行い, それ以後は通常4~5週間ごとに再診させ, 同様の観察および調整を行うことにしている. 口蓋形成術までに3~5回Hotz床の再作製をする. 今回のアンケート調査において哺乳回数が減り, 患児の機嫌が良くなったと答えた母親が多いようだった. また, 1日哺乳量が増加したとする母親が80.8%いた. このように, われわれの行っている治療法は出生後間もない時期から実施されるためその後の患児正常発育が期待でき, また患児家族の不安感を和らげ, 最も適した手術時期を選択できるだけでなく, 医師と患児家族の信頼関係を築く上でも有用と考えられた.
ISSN:0917-5261