経過中, HLA抗体と血小板抗体を生じたAML, M2の1例

目的:同種抗体による血小板輸血不応の原因として, 大部分はHLA抗体によるものであるが, 一部に血小板特異抗体(HPA)が関与するものがある. 今回, AML, M2の患者で末梢血幹細胞移植(PBSCT)を行った症例において, 寛解導入中に血小板輸血不応状態となり精査の 結果, HLA抗体とHPA抗体を同時に認めた症例を経験した. 症例:患者は49歳男性. 主訴は頭痛, めまい, 発熱, 紫斑. 現病歴は入院1ヵ月前より頭痛, めまいがあり, 近医に入院. 入院時検査で白血球数の増加を認められ当院に平成7年11月14日に転院となった. 白血球数は15,820/μlで芽球が89%を占め, AML...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 1; pp. 102 - 103
Main Authors 佐分利能生, 森山恭子, 河野克巳, 中村章, 石川和子, 渡辺芳文, 渡辺聖司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.03.1997
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ISSN0546-1448

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Summary:目的:同種抗体による血小板輸血不応の原因として, 大部分はHLA抗体によるものであるが, 一部に血小板特異抗体(HPA)が関与するものがある. 今回, AML, M2の患者で末梢血幹細胞移植(PBSCT)を行った症例において, 寛解導入中に血小板輸血不応状態となり精査の 結果, HLA抗体とHPA抗体を同時に認めた症例を経験した. 症例:患者は49歳男性. 主訴は頭痛, めまい, 発熱, 紫斑. 現病歴は入院1ヵ月前より頭痛, めまいがあり, 近医に入院. 入院時検査で白血球数の増加を認められ当院に平成7年11月14日に転院となった. 白血球数は15,820/μlで芽球が89%を占め, AMLのM2と診断した. 入院後の経過はダウノマイシンとキロサイドにて寛解導入療法を行い, 寛解後2回の地固め療法にて幹細胞を採取し, 超大量化学療法を施行後PBSCTを行った. 移植時の血小板の最低値は1.6万で, 移植後13日目に白血球数は1,000/μlを越え, 血小板数は17日目以降安定した. 血小板輸血不応状態が平成8年1月頃より生じ, 血小板同種抗体の検査を行った結果, HLA抗体, 血小板特異抗体が認められた. LCT法6/68パネル, AHG-LCT法30/68パネルに陽性の反応が認められMPHA法においては2/7パネルに陽性となった. 抗体特異性はHLA-B7を含む関連抗体およびHPA-2b(Sib^a )抗体であった. なお, この患者のHLAはA2, 31, B59, 5102, HPA-2(a/a)であった. 本例において抗体の推移を見た結果, HLA抗体は2月5日以降検出されなくなり, HPA-2b抗体も徐々に抗体価の低下を認めた. まとめ:AMLの患者で血小板輸血においてHLA抗体とHPA抗体を産生していた. retrospectiveに輸血の効果を見た結果, HPA-2b不適合では, 輸血効果を認めなかった. 今回の輸血においてはHPA-2b陰性が前提でLCT, AHG-LCT法でクロスマッチを行い陰性となったものを輸血した. 血小板輸血不応状態の原因は種々考えられるが, 本例の場合, HLA抗体が検出感度以下でも輸血効果に影響を及ぼす可能性も考えられた.
ISSN:0546-1448