ラット脊髄の循環障害後に生ずる生化学的変動の観察

【目的】われわれは, 虚血に起因する脊髄組織変性モデルとして, ラットの片側後脊髄動脈枝を焼灼閉塞手術した脊髄組織を用いて, 神経組織の変性過程における生化学的変化を調べ, 非閉塞健側と比較検討した. 【実験材料と方法】ウイスター系ラットをpentobarbital麻酔下にC 6~T 3部位の後脊髄動脈右側枝を電気メスで焼灼閉塞した. 術後, 1, 7, 21日後urthane麻酔下に断頭し手術部の脊髄を摘出した. Chrome c oxidase (CO), superoxide dismutase (SOD), lactate dehydrogenase (LDH)の活性は比色法により測定...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 32; no. 12; p. 966
Main Authors 楠戸正子, 鷲見信清, 土肥信之, 藤田公和, 永田豊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.12.1995
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ISSN0034-351X

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Summary:【目的】われわれは, 虚血に起因する脊髄組織変性モデルとして, ラットの片側後脊髄動脈枝を焼灼閉塞手術した脊髄組織を用いて, 神経組織の変性過程における生化学的変化を調べ, 非閉塞健側と比較検討した. 【実験材料と方法】ウイスター系ラットをpentobarbital麻酔下にC 6~T 3部位の後脊髄動脈右側枝を電気メスで焼灼閉塞した. 術後, 1, 7, 21日後urthane麻酔下に断頭し手術部の脊髄を摘出した. Chrome c oxidase (CO), superoxide dismutase (SOD), lactate dehydrogenase (LDH)の活性は比色法により測定した. 【結果と考察】好気的エネルギー産生の指標として, ミトコンドリア内電子伝達系複合体酵素の1つであるCOの活性は, 閉塞側脊髄で術後1日目で急激に低下し, 以後21日目までこの低値が保たれた. 非閉塞側でも, CO活性値の減少がやや軽度だが認められ, 虚血側の影響が及んでいると思われた. 虚血負荷により嫌気性エネルギー産生系が活性化されると, 組織内に蓄積する乳酸を処理するLDHの活性値は, 閉塞側では, 術後1日目から7日目にかけて急激に3倍以上に増大した. 非閉塞側脊髄のLDH活性値も程度は少なかったが, やはり同様に増大した. 虚血により発生する細胞障害性のフリーラジカルの消去に関与するSOD活性は, 閉塞側脊髄のみで術後短期間1日後に急激に3倍以上に増大するが, その活性増加は一過性であった.
ISSN:0034-351X