基底細胞母斑症候群を疑った症例のX線学的検討
基底細胞母斑症候群は, 本疾患を症候群として報告した2人の名をとって, Gorlin-Goltz syndromeとも呼ばれる疾患で, 外胚葉および中胚葉系の器官に, さまざまな奇形的変化を伴う家族性, 遺伝性(優性)の症候群である. 顎・顔面・口腔領域にみられる臨床所見として, 上下の多発性嚢胞, 前頭骨および側頭骨の隆起が著明, 両眼隔離, 広い鼻根部と鼻背部, 軽度の下顎前突が見られることがある. また, 皮膚にみられる臨床所見として, 多発性母斑性基底細胞上皮腫, pit, 掌蹠の角化症, 角化異常, 嚢胞, 血管筋腫などがある. 骨格にみられる臨床所見として, 肋骨の分岐(二分肋骨)...
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| Published in | 歯科放射線 Vol. 40; no. 2; p. 179 |
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| Main Authors | , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本歯科放射線学会
30.06.2000
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| ISSN | 0389-9705 |
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| Summary: | 基底細胞母斑症候群は, 本疾患を症候群として報告した2人の名をとって, Gorlin-Goltz syndromeとも呼ばれる疾患で, 外胚葉および中胚葉系の器官に, さまざまな奇形的変化を伴う家族性, 遺伝性(優性)の症候群である. 顎・顔面・口腔領域にみられる臨床所見として, 上下の多発性嚢胞, 前頭骨および側頭骨の隆起が著明, 両眼隔離, 広い鼻根部と鼻背部, 軽度の下顎前突が見られることがある. また, 皮膚にみられる臨床所見として, 多発性母斑性基底細胞上皮腫, pit, 掌蹠の角化症, 角化異常, 嚢胞, 血管筋腫などがある. 骨格にみられる臨床所見として, 肋骨の分岐(二分肋骨), 脊柱の側彎, 潜在性破裂がある. また, 異所性に石灰化が発現することもあり, 脳硬膜, 嚢胞壁などの石灰沈着や静脈結石, 腎結石が見られることがある. 以上のような多彩な所見が揃っているタイプの診断は容易であるが, 症状の揃わないタイプも多く, そのような場合の診断は困難となる. しかし, 経年的に様々な症状が併発する傾向にある為, 初診時に多発性顎嚢胞があれば特有の顔貌, 家族性などを参考に, 注意深い経過観察を要するとされる. 今回われわれは, 岡山大学歯学部附属病院を訪れた患者のうち, 初診時に基底細胞母斑症候群が強く疑われた症例12例について放射線学的に考察を行った. 患者は11歳~46歳(平均年齢28.6歳)の男性6名, 女性6名で, いずれも回転式パノラマX線写真にて多発性顎嚢胞が確認され, 手掌部にpit, 大脳鎌の石灰化等の症状を伴うものもあった. 多発性顎嚢胞はいずれも病理学的に歯原性角化嚢胞の診断を受け, 開窓手術もしくは嚢胞摘出手術を行った. また6例において歯原性角化嚢胞の再発が見られ, 再び開窓手術もしくは嚢胞摘出手術を行った. 多発性顎嚢胞は病理学的に歯原性角化嚢胞であり再発率も高い. 特に基底細胞母斑症候群では癌発症の可能性まで念頭に置いた注意深い経過観察を行う必要もあろう. また今回の症例には, すでに手術などの既往を受けているものや, 画像診断学的にも確定に至らない症例も多く含まれ, 遺伝子解析による裏付け等今後さらに必要となろう. |
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| ISSN: | 0389-9705 |