遺伝子治療/細胞治療のための臨床用クリーンルーム(臨床細胞工学室)について

分子生物学の進歩により, 遺伝性疾患のみならず癌やエイズなどの多くの後天性疾患の分子病態が解明されつつある. 疾患の原因となる遺伝子の異常が明らかにされれば診断, 予防とともに, それを標的とした治療法の開発が次の目標となる. 本院輸血部は一般輸血業務に加え, 研究所の臨床部門としての性格から, 日常診療に加わると共に, 造血幹細胞移植に代表される細胞移植治療や先端医療としての遺伝子治療をサポートする責務を有している. 白血病, 癌, 先天性疾患など現在の治療法では治癒が望めない疾患にとって, 細胞移植, 遺伝子治療は究極の治療法であり, 早急に確立されることが望まれる. また, 実験室での研...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 45; no. 2; p. 278
Main Authors 前川平, 石井武文, 和田結花, 細田しのぶ, 尾上和夫, 谷健三朗, 高橋恒夫, 浅野茂隆, 中畑龍俊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1999
Online AccessGet full text
ISSN0546-1448

Cover

More Information
Summary:分子生物学の進歩により, 遺伝性疾患のみならず癌やエイズなどの多くの後天性疾患の分子病態が解明されつつある. 疾患の原因となる遺伝子の異常が明らかにされれば診断, 予防とともに, それを標的とした治療法の開発が次の目標となる. 本院輸血部は一般輸血業務に加え, 研究所の臨床部門としての性格から, 日常診療に加わると共に, 造血幹細胞移植に代表される細胞移植治療や先端医療としての遺伝子治療をサポートする責務を有している. 白血病, 癌, 先天性疾患など現在の治療法では治癒が望めない疾患にとって, 細胞移植, 遺伝子治療は究極の治療法であり, 早急に確立されることが望まれる. また, 実験室での研究成果をベッドサイドに還元し(from bench to bed), 細胞移植や遺伝子治療を推進するためには, 細胞の単離, 培養, 増幅や遺伝子導入といった操作を管理された無菌条件下で行う必要がある. わが国ではこうした先端医療をサポートするインフラストラクチャーの整備が遅れているが, 本院では平成9年4月からクリーン・ルームと, 遺伝子導入を取り扱える臨床用P3ルームを備えた臨床細胞工学室(Roo mfor Clinical Cellular Technology:RCCT)の稼働を開始した. このユニットは将来的に輸血部が細胞移植/細胞治療部として, 内科, 小児科, 外科など各診療科の先端医療, 細胞治療のコアになるとの構想から設置されたものである. 現在, RCCTにおいて臍帯血の分離と保存(東京臍帯血バンク), およびレトロウイルスによる細胞への遺伝子導入を行っている. 今後も各臨床科から提出される種々の先端医療プロトコールに対処してゆく予定である. 今回, RCCTの設計, 管理, 運営の概略について述べるとともに, 臍帯血処理, 保存の現状, 造血幹細胞移植や遺伝子治療への利用状況などについて報告する.
ISSN:0546-1448