免疫抑制剤と術前交換輸血で抗体産生を抑制し得たABO血液型major mismatch生体肝移植の1例

ABO major mismatchの肝移植では, recipientの抗A, 抗B抗体が移植片拒絶の主な原因である. 今回, 移植前の血漿交換と移植前後の免疫抑制剤により良好な経過を得ている1例を経験したので報告する. 症例:患者は生後9ヵ月, O型の胆道閉鎖症女児. 臓器提供者はA型の父親. 術前の抗A抗体は生食法で128倍, DTT処理後クームス法で4倍であった. 術前にFK506とシクロフォスファミドを開始し, 合成血を用いた3回の交換輸血により抗A抗体価は16倍となった. 術中の出血量は約1,100mlで, O型赤血球MAP6単位とAB型FFP14単位, PC10単位を使用した. 抗...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 46; no. 6; p. 579
Main Authors 小郷博昭, 浅野尚美, 池田和眞, 有木則文, 八木孝仁, 漆原直人, 田中紀章, 原田実根
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.12.2000
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ISSN0546-1448

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Summary:ABO major mismatchの肝移植では, recipientの抗A, 抗B抗体が移植片拒絶の主な原因である. 今回, 移植前の血漿交換と移植前後の免疫抑制剤により良好な経過を得ている1例を経験したので報告する. 症例:患者は生後9ヵ月, O型の胆道閉鎖症女児. 臓器提供者はA型の父親. 術前の抗A抗体は生食法で128倍, DTT処理後クームス法で4倍であった. 術前にFK506とシクロフォスファミドを開始し, 合成血を用いた3回の交換輸血により抗A抗体価は16倍となった. 術中の出血量は約1,100mlで, O型赤血球MAP6単位とAB型FFP14単位, PC10単位を使用した. 抗A抗体価は, 手術翌日が2倍, 4日目が4倍であったが, 8日目から低下し, 29日目に陰性となった. 手術後101日目に退院となり, 現在, 通院にてFK506内服治療中である. 考察:肝移植においては, ABO血液型に関してidenticalかminor mismatchの組合せが優先されるが, 緊急症例や臓器提供が少ない小児例ではmajor mismatchの組合せで行われることも多い. ABO major mismatchの肝移植の成績は不良であり, 特に15歳以上できわめて成績が悪く, 手術後の抗体価は2歳以上で有意に上昇するとされる. 本症例は, 生後9カ月の小児で, 術前後の免疫抑制剤と手術直前の交換輸血により, 抗A抗体価の上昇を抑制して良好な経過を得ることができたと思われる.
ISSN:0546-1448