溺水蘇生後脳障害に対し高圧酸素療法を行った症例
溺水による蘇生後脳障害に対し, リハビリによる機能回復訓練中に高圧酸素療法(OHP)を行い, その後の経過を追跡している症例を報告する. 症例は2歳男児, 昭和61年11月7日, 池に浮かんでいるのを発見され, その約25分後に当院救急部に搬入された. 来院時, 心呼吸停止, 瞳孔散大, 対光反射なく, 直腸温は, 28.8℃で著明なアシドーシスを認めた. ただちにCPRを行い, 来院20分後には心拍再開, 33分後に自発呼吸の再開をみた. その後は呼吸管理, 痙攣や脳浮腫の予防に努め, 11月19日からはベッドサイドにてリハビリを開始した. しかし約2ヵ月を経過するも後弓反張, 異常筋緊張,...
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          | Published in | 蘇生 Vol. 7; pp. 63 - 64 | 
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| Main Authors | , , , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            日本蘇生学会
    
        01.04.1989
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| ISSN | 0288-4348 | 
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| Summary: | 溺水による蘇生後脳障害に対し, リハビリによる機能回復訓練中に高圧酸素療法(OHP)を行い, その後の経過を追跡している症例を報告する. 症例は2歳男児, 昭和61年11月7日, 池に浮かんでいるのを発見され, その約25分後に当院救急部に搬入された. 来院時, 心呼吸停止, 瞳孔散大, 対光反射なく, 直腸温は, 28.8℃で著明なアシドーシスを認めた. ただちにCPRを行い, 来院20分後には心拍再開, 33分後に自発呼吸の再開をみた. その後は呼吸管理, 痙攣や脳浮腫の予防に努め, 11月19日からはベッドサイドにてリハビリを開始した. しかし約2ヵ月を経過するも後弓反張, 異常筋緊張, 四肢頸部拘縮などの症状の改善は見られなかった. 意識レベルも, 開眼はするが追視はできず啼泣以外の自発的な発語は認められない状況であった. 昭和62年1月16日より2ヵ月間にわたりリハビリと並行しOHPを50回施行したところ, 筋痙直は著明に軽減し, 不安定ながらお座りが可能となった. 精神面でも感情表現が豊かになり不明瞭ではあるが発語するなどの改善がみられた. その後もリハビリを継続中で, 1年10ヵ月後の現在, 知能は2歳半程度で, 運動面では片手つなぎ歩行も可能となっている. 従来から慢性期の中枢神経障害に対する治療は, 身体および精神面での機能回復訓練が主体であった. 本症例のように蘇生後脳障害の症状がある程度固定した時期にOHPを試みたことは, 私たちにとって初めての経験であった. そしてOHP施行中, 明らかな症状改善が認められたことから, これが有効であったとも考えられる. しかしリハビリ期のOHP応用に関しては今後の検討が必要と思われる. | 
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| ISSN: | 0288-4348 |