嚥下障害が問題となった脳性麻痺患者の1症例

嚥下障害が問題となった成人期の脳性麻痺患者のリハビリテーションを経験した. 症例は32歳, 女性. 主訴は, 頻回の肺炎, 嚥下障害, 歩行障害. 体重は1年前から5kg減少, 重度の精神機能障害, 痙性四肢麻痺を認め, 歩行・ADLは軽介助レベル. ビデオ嚥下造影では嚥下運動中に誤嚥を認めた. 頻回の肺炎の要因として側弯症で姿勢が不安定, 両上肢の巧緻性低下もあり, 前傾姿勢となりがちであったこと, 知的低下のため食事指導に対する理解が不十分であったことが考えられた. そこで上下可変式テーブル・座位保持装置付きリクライニング車椅子を作製し, 食形態・食事のペースなど食事時の環境調整を行ったと...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 37; no. 5; p. 293
Main Authors 西垣謙, 辻哲也, 正門由久, 速水聰, 新藤恵一郎, 小宗陽子, 長谷公隆, 樋口佳子, 木村彰男, 千野直一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.05.2000
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ISSN0034-351X

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Summary:嚥下障害が問題となった成人期の脳性麻痺患者のリハビリテーションを経験した. 症例は32歳, 女性. 主訴は, 頻回の肺炎, 嚥下障害, 歩行障害. 体重は1年前から5kg減少, 重度の精神機能障害, 痙性四肢麻痺を認め, 歩行・ADLは軽介助レベル. ビデオ嚥下造影では嚥下運動中に誤嚥を認めた. 頻回の肺炎の要因として側弯症で姿勢が不安定, 両上肢の巧緻性低下もあり, 前傾姿勢となりがちであったこと, 知的低下のため食事指導に対する理解が不十分であったことが考えられた. そこで上下可変式テーブル・座位保持装置付きリクライニング車椅子を作製し, 食形態・食事のペースなど食事時の環境調整を行ったところ, 肺炎の再発を予防できた. 本症例では, 頻発する肺炎の原因が嚥下障害にあるという認識がなく, 1年間対処的な肺炎の治療のみで根本的な解決がなされていなかった. また, 誤嚥性肺炎を併発し活動性低下, 筋力低下・拘縮, 歩行能力ADL低下, 活動性低下という悪循環にはまりつつあったが, リハの介入によりこれを断ち切ることができた.
ISSN:0034-351X