経産婦献血者におけるYuk抗体について

【目的】今回, 我々は, Yuk抗体スクリーニングにおいて稀な抗体, 抗Yuk^b 抗体の1例を検出したので, 抗Yuk^a 抗体42例と併せて報告する. 【方法】リンパ球抗体の検出には, リンパ球細胞毒性試験(LCT), 血小板抗原抗体の検出にはMPHA法を用いた. HLA抗体と血小板特異抗体の鑑別は, クロロキン処理法によってその鑑別を行った. 最終的な抗体の同定は, 昨年, 柴田らが本学会に報告した血小板抽出抗原パネルによって行った. 【結果】経産婦献血者34,208例についてYuk抗体スクリーニングした結果, 血小板特異抗体によるものは43例で, そのうち抗Yuk^b 抗体による1例と...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 35; no. 2; p. 224
Main Authors 森田庄治, 蛭川千絵, 石島あや子, 岡崎正太郎, 金信子, 柴田洋一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1989
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ISSN0546-1448

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Summary:【目的】今回, 我々は, Yuk抗体スクリーニングにおいて稀な抗体, 抗Yuk^b 抗体の1例を検出したので, 抗Yuk^a 抗体42例と併せて報告する. 【方法】リンパ球抗体の検出には, リンパ球細胞毒性試験(LCT), 血小板抗原抗体の検出にはMPHA法を用いた. HLA抗体と血小板特異抗体の鑑別は, クロロキン処理法によってその鑑別を行った. 最終的な抗体の同定は, 昨年, 柴田らが本学会に報告した血小板抽出抗原パネルによって行った. 【結果】経産婦献血者34,208例についてYuk抗体スクリーニングした結果, 血小板特異抗体によるものは43例で, そのうち抗Yuk^b 抗体による1例と抗Yuk^a 抗体によるもの42例であった. この43例はいずれもクロロキン処理後においても抗体活性が認められた. 1)抗Yuk^b 抗体の同定 本抗体の特異性の解明は, いずれの血小板とも反応することからその同定は通常は容易ではない. しかしこれを血小板抽出抗原パネル(8人)と反応させた結果, Yuk^a /Yuk^a パネルのみ陰性, Yuk^a /Yuk^b 及びYuk^b /Yuk^b パネルとは全て陽性を示したので, このことから本抗体は抗Yuk^b 抗体と同定された. 後日, この母親自身の血小板と, すでに柴田らがNAITP症例より検出している我国で唯一の抗体, 抗Yuk^b 抗体と反応させたところ, この血小板との反応は認められずYuk^a /Yuk^a 型であることが確認された. 2)抗Yuk^a 抗体の同定 抗Yuk^a 抗体の同定は, 血小板パネルと血小板抽出抗原パネルを併用し, 双方の反応は完全に一致した. なお, 抗Yuk^a 抗体は34,208例中42例(0.12%)の高率で検出され, 抗Yuk^a 抗体は約800人の経産婦中に1人の割合で本抗体保有者がいることが確認された. 【考察】経産婦献血者より稀な血小板特異抗体, 抗Yuk^b 抗体の1例を検出した. Yuk^b 不適合はこれまで計算上では新生児1万人に1人とされているが, Yuk^b 不適合によって実際にどの程度母親に抗体産生があるのか, 現在のところわかっていない. 今後, 我々は経産婦献血者より多くの同症例を検出することでその頻度を明らかにしたい.
ISSN:0546-1448