末梢性顔面神経麻痺の診断と治療

末梢性顔面神経麻痺の約70%はBell麻痺, 約15%がHunt症候群である. Hunt症候群はVZVの再活性化によるもので, どのような治療によっても治癒率60~70%にしかならない予後不良の疾患である. Bell麻痺は無治療でも70%の治癒率が得られる予後良好の疾患であるが, Hunt症候群の中に疱疹を示さないzoster sine herpete(ZSH)があり, 初診時にBell麻痺と診断出来る症例の約20%にZSHが含まれる. 最近, Bell麻痺はHSV-1の再活化によるものである可能性が高いとされるが, 我々のウイルス学的検討では, HSV-1の関与が証明出来たBell麻痺症例は...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 57; no. 2; p. 218
Main Author 青柳優
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.05.2007
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ISSN1343-2826

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Summary:末梢性顔面神経麻痺の約70%はBell麻痺, 約15%がHunt症候群である. Hunt症候群はVZVの再活性化によるもので, どのような治療によっても治癒率60~70%にしかならない予後不良の疾患である. Bell麻痺は無治療でも70%の治癒率が得られる予後良好の疾患であるが, Hunt症候群の中に疱疹を示さないzoster sine herpete(ZSH)があり, 初診時にBell麻痺と診断出来る症例の約20%にZSHが含まれる. 最近, Bell麻痺はHSV-1の再活化によるものである可能性が高いとされるが, 我々のウイルス学的検討では, HSV-1の関与が証明出来たBell麻痺症例は約20%にとどまった. 顔面神経麻痺の診断は原因診断, 予後診断, 障害部位診断よりなるが, 最も重要なのは原因診断であり, 中でもBell麻痺と考えられる症例においてZSHを出来るだけ早期に診断することが肝要である. そのためウイルス学的診断が重要となる. 障害部位診断は, 外傷性麻痺などにおいて減荷手術を施行する時のみに必要となる. 正確な予後診断には電気刺激を用いたENoGやNETなどが必要であるが, これらは発症7~10日以降でないと診断的意義はない. 発症早期に予後良好例を選別するには磁気刺激誘発筋電図検査(TMS)やアブミ骨筋反射(SR)が有用である. 受診時に顔面運動採点法(40点法)が10点以上で, TMA, SRいずれも反応が認められれば予後良好と判定できる. Bell麻痺治療の基本はステロイドと抗ウイルス剤の併用であるが, プンドノゾロン(PSL)60mg+バラシクロビル(VACV)1000mg経口投与は必ずしも有効ではない. しかし, PSL60mg+VACV3000mg(VZVの適応量)経口投与は有効であり推奨できる. 我々のBell麻痺に対する治療方針は, 受診時採点が10点以上ならPSL40~60mg+VACV1000mg経口投与, 8点以下なら入院の上, ステロイド大量療法(山形大学方式:PSL200mgから漸減)を基本としている. これにより約95%の治療率が得られている.
ISSN:1343-2826