福永論文に対するEditorial Comment
福永論文は, 児頭大の巨大子宮筋腫による骨盤内静脈圧迫に伴い形成された深部静脈血栓症より急性肺血栓塞栓症を来した症例について報告している. 本症例ではBMI32.4と肥満を認める以外には明らかな静脈血栓塞栓症の危険因子を有しておらず, Virchow血栓形成三大因子である, (1)血流停滞, (2)血管内皮障害, (3)血液凝固能亢進のうち, (1)の関与による血栓形成である. 子宮筋腫に限ったことではなく, 卵巣腫瘍, リンパ節腫脹, リンパ嚢腫, 動脈瘤といったその他の腹部骨盤内腫瘤による腸骨静脈や下大静脈への圧迫により静脈血流が障害されれば, 当然, 静脈血栓を生じ得る. したがって,...
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Published in | 心臓 Vol. 38; no. 2; pp. 149 - 150 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本心臓財団
15.02.2006
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ISSN | 0586-4488 |
Cover
Summary: | 福永論文は, 児頭大の巨大子宮筋腫による骨盤内静脈圧迫に伴い形成された深部静脈血栓症より急性肺血栓塞栓症を来した症例について報告している. 本症例ではBMI32.4と肥満を認める以外には明らかな静脈血栓塞栓症の危険因子を有しておらず, Virchow血栓形成三大因子である, (1)血流停滞, (2)血管内皮障害, (3)血液凝固能亢進のうち, (1)の関与による血栓形成である. 子宮筋腫に限ったことではなく, 卵巣腫瘍, リンパ節腫脹, リンパ嚢腫, 動脈瘤といったその他の腹部骨盤内腫瘤による腸骨静脈や下大静脈への圧迫により静脈血流が障害されれば, 当然, 静脈血栓を生じ得る. したがって, 手術, 外傷, 妊娠, 出産, 長期臥床, 血栓性素因など明らかな危険因子を有さない静脈血栓塞栓症においては, 腹部骨盤内の検索を考慮すべきである. 静脈血栓塞栓症は, 近年, わが国でも増加傾向が指摘されている. しかしながら, 特に肺血栓塞栓症は症状所見が非特異的であることより, いまだに正確に診断されずに見過ごされている症例も少なくない. |
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ISSN: | 0586-4488 |