唾液腺腫瘍における病理診断のポイント

唾液腺は大唾液腺(耳下腺, 顎下腺, 舌下腺)と口腔内に分布する小唾液腺に分類されるが, 鼻腔, 喉頭, 咽頭, 気管, 気管支, 食道の付属器腺も小唾液腺の一種である. 組織学的には腺房細胞(粘液細胞, 漿液細胞), 導管(介在部, 線状部, 小葉間導管, 主導管)から成り, 腺房と介在部導管の基底側には筋上皮細胞が存在する. 睡液腺腫瘍は全腫瘍の1%程度に過ぎず, そのほとんどが上皮性腫瘍で, 稀に軟部腫瘍や悪性リンパ腫が発生する. 発生部位は耳下腺, 顎下腺, 小唾液腺, 舌下腺の順で, 多くの腫瘍は大唾液腺(特に, 耳下腺)に発生するが, 細管状腺腫(特に, 上口唇), 多型低悪性度腺...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 20; no. 3; p. 161
Main Author 横山繁生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本口腔腫瘍学会 15.09.2008
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ISSN0915-5988

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Summary:唾液腺は大唾液腺(耳下腺, 顎下腺, 舌下腺)と口腔内に分布する小唾液腺に分類されるが, 鼻腔, 喉頭, 咽頭, 気管, 気管支, 食道の付属器腺も小唾液腺の一種である. 組織学的には腺房細胞(粘液細胞, 漿液細胞), 導管(介在部, 線状部, 小葉間導管, 主導管)から成り, 腺房と介在部導管の基底側には筋上皮細胞が存在する. 睡液腺腫瘍は全腫瘍の1%程度に過ぎず, そのほとんどが上皮性腫瘍で, 稀に軟部腫瘍や悪性リンパ腫が発生する. 発生部位は耳下腺, 顎下腺, 小唾液腺, 舌下腺の順で, 多くの腫瘍は大唾液腺(特に, 耳下腺)に発生するが, 細管状腺腫(特に, 上口唇), 多型低悪性度腺癌など小唾液腺に好発する腫瘍もある. また, 多形腺腫のように, 大唾液腺発生例では被包性でも, 小唾液腺に発生した場合には被膜を欠き, 浸潤様に見える場合もあるので注意が必要である. 組織型としては, 多形腺腫(約60%)とワルチン腫瘍(約10%)が大半を占め, 約30%程度が基底細胞腺腫などの他の良性腫瘍と, 粘表皮癌・腺房細胞癌・腺様嚢胞癌・腺癌NOS, 多形腺腫由来癌などの悪性腫瘍になる. 前述のように唾液腺を構成する上皮細胞は腺単細胞, 導管上皮, 筋上皮細胞しかないが, 同じ腫瘍でも症例間で細胞形態や増殖パターンが異なる場合や, 逆に, 異なる腫瘍が類似した細胞形態や増殖パターンを呈する場合もある. 特に, 細胞形態としては明細胞から成る腫瘍(明細胞癌NOS, 明細胞型筋上皮腫/筋上皮癌, 上皮筋上皮癌, 明細胞型粘表皮癌など), 好酸性細胞から成る腫瘍(ワルチン腫瘍, オンコサイトーマ/オンコサイト癌, 唾液腺導管癌など), 類基底細胞から成る腫瘍(基底細胞腺腫/基底細胞癌, 腺様嚢胞癌, 唾液腺芽腫など), 増殖パターンとしては篩状パターンを示す腫瘍(腺様嚢胞癌, 多形腺腫, 唾液腺導管癌, 唾液腺芽腫など)の鑑別が問題となる. また, 腫瘍は単クローン性なので, 一般に単一起源の細胞が増殖するが, 導管上皮と筋上皮細胞由来の2相性を示す唾液腺悪性腫瘍(上皮筋上皮癌, 腺様嚢胞癌, 多型低悪性度腺癌など)も稀ではない. 更に, 腺房細胞癌や粘表皮癌などではTALP(tumor-associated lymphoid stroma)と呼ばれる著明なリンパ球浸潤を伴う場合があり, 唾液腺内リンパ節の転移病巣と誤診される可能性がある. 唾液腺腫瘍の分類としては一般にWHO分類とAFIP分類が用いられているが, 定義が曖昧な腫瘍や両者の定義に多少の食い違いのある腫瘍もある. WHO分類は2005年に改訂となったが(World Health Organization Classification of Tumors:Pathology and Genetics of the Head and Neck tumors), 旧版(1991年)との大きな違いは, 腫瘍様病変が全て削除され, 幾つかの腫瘍が加わった点にある. 本講演では, 新旧WHO分類の相違点, 主な睡液腺腫瘍の診断・鑑別のポイントに付いて述べる.
ISSN:0915-5988