新鮮凍結血漿使用状況と問題点

I. 目的:昭和61年に赤血球濃厚液, 新鮮凍結血漿, アルブミン適正使用のガイドラインが公表されて血液製剤の使用内容が是正されるかのように思われたが, まだ充分に理解され適正に使用されていないのが現状であろう. 特に新鮮凍結血漿(FFP)は濃厚赤血球の抱合せあるいは, アルブミン製剤(Alb)の代用として使用されたりしている. そこで当院で輸血されるFFPの使用状況を検討した. II. 対象と方法:血液製剤の使用状況を年次別に集計し, ガイドラインが公表されてからのFFPとAlbの使用量の推移を比較した. また, 最近3ヵ月間に使用された108例の入院患者を選び, FFP使用症例の基礎疾患,...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 37; no. 2; p. 223
Main Authors 馬場真澄, 志田光正, 伊藤武善, 八田善弘, 神田靖男, 石野たい子, 阿部まを, 星野茂角, 川平宏, 並木浩信, 宮沢浩子, 堀江孝至
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.03.1991
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ISSN0546-1448

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Summary:I. 目的:昭和61年に赤血球濃厚液, 新鮮凍結血漿, アルブミン適正使用のガイドラインが公表されて血液製剤の使用内容が是正されるかのように思われたが, まだ充分に理解され適正に使用されていないのが現状であろう. 特に新鮮凍結血漿(FFP)は濃厚赤血球の抱合せあるいは, アルブミン製剤(Alb)の代用として使用されたりしている. そこで当院で輸血されるFFPの使用状況を検討した. II. 対象と方法:血液製剤の使用状況を年次別に集計し, ガイドラインが公表されてからのFFPとAlbの使用量の推移を比較した. また, 最近3ヵ月間に使用された108例の入院患者を選び, FFP使用症例の基礎疾患, 凝血学的検査結果と血清アルブミン濃度などをretrospectiveに検討して, FFPの使用目的がガイドラインに沿った適応に合致するか否か, 今後の問題を検討した. III. 結果:ガイドラインが公表された61年からはアルブミンの使用著しく減少しているが, FFPの使用量には減少が認められなかった. 当院での総使用単位数(赤血球製剤, 血小板製剤およびFFP)に対するFFPの割合は高くなった. FFPは単独で輸血される場合より新鮮血や赤血球製剤と一緒に用いられていた. 外科領域では肝手術症例に多く使われ, 内科領域ではDICの症例などFFPの対象症例に多く用いられていた. しかし, ガイドラインに沿った使用例は少なかった. 外科領域の一部で低アルブミンの補正目的にFFPが使用されており, また凝血学的検査が施行されて居らず, FFPよりAlbの適応と考えられる症例もあった. IV. 結論:FFPが輸血される症例はガイドラインで適応対象とされる疾患であったが, 実際は充分な検査が行われておらず, 必ずしもガイドラインに沿った使用ではなかった. アルブミンの使用が著しく減少したにもかかわらず新鮮凍結血漿の使用が適正化されない原因には, FFPの使用基準が充分理解されて臨床医に了承されていない点があげられ, 今後も教育と啓蒙が必要である. とくに研修医が交替する病院では繰り返し教育が必要であろう.
ISSN:0546-1448