長期非荷重状態が引き起こす組織化学的特徴の部位別検討

昨年の本学会において, ラット足底筋において長軸方向の異なる3部位(遠位, 中間位, 近位)での筋線維組成を比較し, 部位により組成が異なること, また3週間の非荷重状態(後肢懸垂モデル)ではいずれの部位においても組成変化は生じないことを報告した. 今回はさらに長期の非荷重状態(8週間)による筋線維組成変化と筋線維萎縮動態について長軸方向の異なる5部位において検討した. 成熟した約250gのF344系雌性ラット(6ヵ月齢)を対照群(η=6)と8週間の後肢懸垂を負荷する非荷重群(η=6)に分けた. 組織化学的分析は右側足底筋を用い, 近位端から筋長の10,30,50,70,90%の部位で作成した...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 36; no. 11; p. 802
Main Authors 山内秀樹, 宮野佐年, 田端淳一, 殷祥洙, 米本恭三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1999
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ISSN0034-351X

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Summary:昨年の本学会において, ラット足底筋において長軸方向の異なる3部位(遠位, 中間位, 近位)での筋線維組成を比較し, 部位により組成が異なること, また3週間の非荷重状態(後肢懸垂モデル)ではいずれの部位においても組成変化は生じないことを報告した. 今回はさらに長期の非荷重状態(8週間)による筋線維組成変化と筋線維萎縮動態について長軸方向の異なる5部位において検討した. 成熟した約250gのF344系雌性ラット(6ヵ月齢)を対照群(η=6)と8週間の後肢懸垂を負荷する非荷重群(η=6)に分けた. 組織化学的分析は右側足底筋を用い, 近位端から筋長の10,30,50,70,90%の部位で作成した横断切片にATPase染色(pre-incubation pH4.3,4.55,10.4)を施し, 得られた標本よりタイプ別(type I,IIC,IIA,IID/X,IIB)に筋線維本数比と横断面積を算出した. 非荷重により足底筋重量は約30%低下した. 非荷重1,3週間ではそれぞれ20,30%の重量低下がみられた結果(昨年の報告)から, 非荷重3から8週間にかけての筋萎縮の進行はみられなかった. 筋線維組成はいずれの群においても10,90%部位は他の部位に比べtype I,IIA線維比率が低い傾向を認めたが, 非荷重による影響はみられなかった. 一方, 非荷重によりtype IIB線維比率の増加とIID/X線維比率の低下がいずれの部位においても観察された. タイプ別筋線維サイズの変化では, すべてのタイプに萎縮がみられたが, 90%部位では筋線維サイズの減少は少ない傾向を認めた. 以上の結果は, 長期非荷重によりラット足底筋の筋全体にわたって, type IIBとtype IID/X線維間での筋線維タイプ移行が生じることが示唆された.
ISSN:0034-351X