血漿交換が有効であったSpur cell anemia

Spur cell anemiaは重篤な肝疾患に稀に合併する溶血性貧血で, その特異な赤血球形態と予後が不良であることで知られている. 今回当科で経験した2症例に対して, 血漿交換を施行したのでその効果につき報告する. 症例1. 59歳女性. 8年前に肝硬変と診断され, 当科に入退院を繰り返していた. 今回悪性黒色腫にて左下腿切断術を受け, その後肝不全となり, Spur cell anemiaが出現した. 貧血が急速に進行するため, 輸血と2,000mlの血漿交換を行ったところ, 輸血量以上に貧血は改善し, その後約2週間貧血は進行しなかった. 血漿交換前の患者血漿と正常人赤血球を混合すると...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 37; no. 2; p. 292
Main Authors 森川利則, 千代田晨
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.03.1991
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ISSN0546-1448

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Summary:Spur cell anemiaは重篤な肝疾患に稀に合併する溶血性貧血で, その特異な赤血球形態と予後が不良であることで知られている. 今回当科で経験した2症例に対して, 血漿交換を施行したのでその効果につき報告する. 症例1. 59歳女性. 8年前に肝硬変と診断され, 当科に入退院を繰り返していた. 今回悪性黒色腫にて左下腿切断術を受け, その後肝不全となり, Spur cell anemiaが出現した. 貧血が急速に進行するため, 輸血と2,000mlの血漿交換を行ったところ, 輸血量以上に貧血は改善し, その後約2週間貧血は進行しなかった. 血漿交換前の患者血漿と正常人赤血球を混合するとspur cellを形成したが, 血漿交換後の患者血漿と正常人赤血球を混合してもspur cellは形成されなかったことから, 血漿交換によりspur cell形成が抑制されたと考えられる. 症例2. 76歳, 女性. 3年前に肝硬変と診断され, 当科にて経過観察されていた. 今回腹水コントロール目的で当科入院となり, 利尿剤を投与されていたが, 下痢による脱水状態をきたし, その後spur cell anemiaが出現した. 貧血が急速に進行するため, 輸血と1,400mlの血漿交換を施行したところ, 貧血は急速に改善し, 以後2週間進行しなかった. 血漿交換前後の血漿と正常人赤血球とを混合すると, 症例1と同様の結果が得られた. spur cell形成の機序に関しては, 何らかの因子により, 赤血球膜の遊離コレステロールと燐脂質の比が上昇するためとされているが, 詳細は明らかでなく予後も不良である. spur cell anemiaに対して従来, 唯一摘脾が有効とされてきたが, 実際にはspur cell出現時には, 全身状態不良のため摘脾不能であることが多い. 今回呈示した2症例では, 比較的少量の血漿交換で貧血の進行が抑制されたことから, spur cell anemiaに対する有効な非観血的療法として期待される.
ISSN:0546-1448