杉山論文に対するEditorial Comment

ヒトの心房から房室結節への興奮伝導は, 右心房から房室結節(compact AV node)へ向かう前方(速伝導路)と後方(遅伝導路)の2方向からの進入経路(dual inputs)に主に依存する. このほかに左房側からのinputなどの存在が示唆されている(multiple inputs説)が, 速伝導路を選択的に焼灼するとPR間隔は延長し, これに続き遅伝導路を焼灼すると完全房室ブロックが誘発されることがある1). 房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)は, 発作性上室性頻拍のなかで最も高頻度に遭遇する疾患である. 通常型AVNRT中, 興奮波は遅伝導路を順行し, 房室結節で反転して速伝...

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Published in心臓 Vol. 39; no. 9; pp. 815 - 816
Main Author 平尾見三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団 15.09.2007
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ISSN0586-4488

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Summary:ヒトの心房から房室結節への興奮伝導は, 右心房から房室結節(compact AV node)へ向かう前方(速伝導路)と後方(遅伝導路)の2方向からの進入経路(dual inputs)に主に依存する. このほかに左房側からのinputなどの存在が示唆されている(multiple inputs説)が, 速伝導路を選択的に焼灼するとPR間隔は延長し, これに続き遅伝導路を焼灼すると完全房室ブロックが誘発されることがある1). 房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)は, 発作性上室性頻拍のなかで最も高頻度に遭遇する疾患である. 通常型AVNRT中, 興奮波は遅伝導路を順行し, 房室結節で反転して速伝導を逆行する回路を形成する. 房室結節から離れた後中隔への通電による遅伝導路焼灼法で房室ブロックが発生するのは, 房室結節が傷害されたか, 遅伝導路だけでなく速伝導路も同時に傷害されたと推測されるが, 主に術者側の問題が多い. 稀ながら,患者側の問題で房室ブロックが発生する. 通常は前中隔に位置する速伝導路が後方に偏位した場合と, 速伝導路に伝導障害(あるいは伝導途絶)が通電前から存在した場合である.
ISSN:0586-4488