心筋保護システムの問題と課題

【目的】現状の心筋保護システムは, 成人・小児等の症例や術者によって異なる心筋保護液組成・回路を使用している. 今回, 安全な心筋保護液システムの構築を目指し, 現在の問題点と今後の方向性を検討した. 【現状】心筋保護液供給装置は人工心肺装置と別に独立した装置を用いている. 心筋保護回路は, 成人用ではワンローラ回路とツーローラ回路(選択的冠灌流時)の2種類ある. 小児用は加圧式に心筋保護液を注入する回路で, 成人用と同様に2種類の回路を使い分けている. 心筋保護液組成は, 成人用は3種類, 小児用も3種類, 計6種類存在し, GIKは成人と小児で若干異なっている. 注入量も術者や症例によって...

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Published in体外循環技術 Vol. 35; no. 2; p. 183
Main Authors 江口友英, 加藤篤志, 石川直也, 尾関友紀, 海老澤佳世, 北村麻未, 南茂, 黒澤博身
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 01.06.2008
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ISSN0912-2664

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Summary:【目的】現状の心筋保護システムは, 成人・小児等の症例や術者によって異なる心筋保護液組成・回路を使用している. 今回, 安全な心筋保護液システムの構築を目指し, 現在の問題点と今後の方向性を検討した. 【現状】心筋保護液供給装置は人工心肺装置と別に独立した装置を用いている. 心筋保護回路は, 成人用ではワンローラ回路とツーローラ回路(選択的冠灌流時)の2種類ある. 小児用は加圧式に心筋保護液を注入する回路で, 成人用と同様に2種類の回路を使い分けている. 心筋保護液組成は, 成人用は3種類, 小児用も3種類, 計6種類存在し, GIKは成人と小児で若干異なっている. 注入量も術者や症例によって異なる. 注入時モニターは, 順行性は回路内圧, 逆行性ではカニューレ先端圧でモニターしている. しかし, 順行性, 逆行性とも先端圧をモニターしている術者もいる. 加圧式注入法では, 回路内圧モニターを行っておらず, 滴下で注入速度を見ている. 【問題】心筋保護液の供給に専用装置を使用しているため, 人工心肺担当者と心筋保護担当者が独立した状態で必要であり, システムおよびマンパワーが分散してしまう. 症例により心筋保護液回路が異なること, 術者毎に心筋保護液組成が異なること, 投与量が異なること, 注入中のモニターが異なることなど, 心筋保護供給システム全体が基準化されていない. 特に, 心筋保護液組成が異なるため晶質液を混合(作製)する際に間違いが生じやすくなる. 術者に注入状態を伝える際, どこの圧をモニターしているのか, またどの圧を報告すれば良いか混同してしまい, 正しい情報を共有することが出来なくなるなどの問題があり, インシデントが生じている. 【対策】成人, 小児(新生児など)により組成や投与方法の違いは止むを得ないが, 基本的に術者による違いを見直し, 可能な限り装置, 回路, 組成, 投与量の基準, 注入中のモニターなどを統一させ, 安全な心筋保護供給システムとなるよう検討が必要である. 【結語】現在, 外科医, 麻酔科医, 臨床工学技士により話し合いを行い, より安全な心筋保護液供給システムの構築を模索している.
ISSN:0912-2664