小児顔面口腔軟組織外傷の臨床統計的検討

1986年6月から1996年5月までに大阪大学歯学部附属病院第二口腔外科を受診した, 16歳未満の硬組織の外傷を伴わない顔面口腔軟組織外傷症例73例を対象症例として臨床統計的検討を行い報告した. 対象症例の年齢分布は, 1歳児が23症例(31.5%)と最も多く, 6歳未満の症例が全体の78.1%を占めていた. 性比は男児50例女児23例でほぼ2:1だったが, 乳児期においては性差はなく, 学童期および思春期ではそれぞれ8:1および6:1で男児に多い傾向がみられた. 好発受傷月は乳幼児期ではみられなかったが, 学童・思春期では秋季に若干多かった. 受傷時刻は, 乳児期に好発時間帯がなかったのに対...

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Published in小児口腔外科 Vol. 7; no. 1; p. 78
Main Authors 中西千草, 加納康行, 額田順一郎, 太田嘉幸, 藤代博巳, 道澤雅裕, 松本理基, 作田正義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児口腔外科学会 01.07.1997
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ISSN0917-5261

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Summary:1986年6月から1996年5月までに大阪大学歯学部附属病院第二口腔外科を受診した, 16歳未満の硬組織の外傷を伴わない顔面口腔軟組織外傷症例73例を対象症例として臨床統計的検討を行い報告した. 対象症例の年齢分布は, 1歳児が23症例(31.5%)と最も多く, 6歳未満の症例が全体の78.1%を占めていた. 性比は男児50例女児23例でほぼ2:1だったが, 乳児期においては性差はなく, 学童期および思春期ではそれぞれ8:1および6:1で男児に多い傾向がみられた. 好発受傷月は乳幼児期ではみられなかったが, 学童・思春期では秋季に若干多かった. 受傷時刻は, 乳児期に好発時間帯がなかったのに対し, 幼児期では夕方からの受傷が増加していた. 検索可能な67症例中, 受傷当日の来院症例は30例(44.8%)と最も多く, また, 67症例中52例(77.6%)は受傷日にいずれかの医療機関を受診していた. 受傷当日のいずれかの医療機関への受診率は, 加齢に従って減少する傾向を示していた. 受傷原因は, 乳児期, 幼児期では転倒が最も多く, 乳児期では78%, 幼児期58%を占めていた. 幼児期の転倒28例中13例は, 物を銜えての受傷だった. 学童期, 思春期では転倒に代わりスポーツ, 殴打などの原因がみられた. 受傷部位は舌17部位(21.5%), 口蓋および顔面皮膚各12部位(15.2%), 上唇小帯9部位(11.4%)などの順に多くみられた. 乳児期では上唇小帯, 舌, 幼児期では, 口蓋, 舌に受傷が多くみられ, また, 学童期, 思春期では顔面皮膚に多くみられた. 73症例79部位の受傷様式では裂傷が69部位(87.3%)と最も多く, 次いで挫創10部位(12.7%)だった. 発育期別では乳児期において挫創はみとめられず, 加齢にともなって挫創の占める割合が増加していた.
ISSN:0917-5261