筈井論文に対するEditorial Comment
ドクターカー・システムには二つの方式がある. 一つは病院に属する高規格特殊救急車が独自のスタイルによって救急隊とは独立して医師・看護師主体で運営される方式, もう一つはワークステーション方式といって消防局救急隊ステーションと救急救命センターが同じ敷地内にあり, 要請を受けて救急救命士と医師が同乗した特別救急隊が出動する方式である1). 前者は従来, 日本医大CCUなどが行ってきた方式で, モービルCCUと呼ばれるドクターカーは緊急薬品, モニター, 電気的除細動器, 人工呼吸器, IABP, PCPSなどが搭載でき, 特殊治療が必要な極めて重篤な患者の病院間移送などにあたる. 大阪府立千里救命...
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Published in | 心臓 Vol. 38; no. 6; p. 616 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本心臓財団
15.06.2006
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ISSN | 0586-4488 |
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Summary: | ドクターカー・システムには二つの方式がある. 一つは病院に属する高規格特殊救急車が独自のスタイルによって救急隊とは独立して医師・看護師主体で運営される方式, もう一つはワークステーション方式といって消防局救急隊ステーションと救急救命センターが同じ敷地内にあり, 要請を受けて救急救命士と医師が同乗した特別救急隊が出動する方式である1). 前者は従来, 日本医大CCUなどが行ってきた方式で, モービルCCUと呼ばれるドクターカーは緊急薬品, モニター, 電気的除細動器, 人工呼吸器, IABP, PCPSなどが搭載でき, 特殊治療が必要な極めて重篤な患者の病院間移送などにあたる. 大阪府立千里救命救急センターや日本医大救命救急センターではこのような病院特殊救急車を消防指令センターの要請を受けて出動させる. 病院研修中の救急救命士がいればこのドクターカーに同乗することもできる. 済生会熊本病院や総合会津中央病院ではドッキング方式といって, 消防局救急車とドクターカーが連携を取って患者を引き継ぐ方式を用いている. 一方, ワークステーション方式は消防庁救急車に医師が同乗する方式であり, 本論文に示される高槻市(大阪府三島救命救急センター)の特殊救急隊や船橋市立医療センター2)などで実績がある. 救急医療の基本は, 最も早く最善の治療を施すことである. 医師がすべての現場に急行できれば高度な救急医療が行われるが, 現実には困難であるので, 医師の乗った特殊救急隊と所轄救急隊を同時に要請し, メデイカルコントロールによって所轄救急隊のみが現場に急行することもある. このワークステーション方式が他の方法に比して有効であるという確証はない. また出動の98%は救命士の技量で解決できるとの報告もある. さらに医師の行う救急医療行為のほとんどを救命士が行うことができればこのようなシステムは必要ないことになる. 実際, エピネフリン静注の訓練が救命士の間で進んでいる. しかし, 医師が現場に赴くことの重要性を述べた筈井論文は意義がある. 現場に出ることは救急医療の原点であり, 医師にとっても現場での連携は重要な教育の場でもある3). さらにはメディカルディレクターの養成にもつながると考えられるからである. 文献 1)林 靖之, 太田宗夫:救急搬送体制 ドクターカーシステム. 臨床と研究 2000;77:1493-1495 2)矢走英夫, 栗原宣夫, 高木恒雄, ほか:ドクターカーの将来. 日医雑誌 1996;116:1259-1264 3)山本五十年, 中川儀英, 剣持 功:救急医療のチームワーク 救急救命士とのチームワーク. Emerg Care 2005;18:831-837 |
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ISSN: | 0586-4488 |