血液保存中及び周術期のTh1/Th2バランスの変化について
「目的」 連続的な自己血貯血が周術期の免疫能にどのような影響を及ぼすかについて, Th1/Th2バランスの変化から基礎的な検討した. また保存血液中のTh1/Th2バランスの変化についても検討し, 輸血の影響について考察した. 「方法」 自己血貯血患者28例(良性群18, 悪性群10)を対象とした. 週1回200-400mL貯血した際に少量の血液を採取し, 細胞性免疫活性化の指標としてTh1由来のIFN-γを, 液性免疫活性化の指標としてTh2由来のIL-4, IL10をELISAで測定した. またTh0からTh1への分化に関与するとされるIL-12についても検討した. 術後は3Wまで定期的に...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 47; no. 2; p. 240 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.04.2001
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 「目的」 連続的な自己血貯血が周術期の免疫能にどのような影響を及ぼすかについて, Th1/Th2バランスの変化から基礎的な検討した. また保存血液中のTh1/Th2バランスの変化についても検討し, 輸血の影響について考察した. 「方法」 自己血貯血患者28例(良性群18, 悪性群10)を対象とした. 週1回200-400mL貯血した際に少量の血液を採取し, 細胞性免疫活性化の指標としてTh1由来のIFN-γを, 液性免疫活性化の指標としてTh2由来のIL-4, IL10をELISAで測定した. またTh0からTh1への分化に関与するとされるIL-12についても検討した. 術後は3Wまで定期的に上記項目を測定した. これとは別に冷蔵保存血液中のTh1/Th2の変化をみるために5件の未使用自己血を用いて経時的にサンプリングし同項目を測定した. 「成績」 術前約3週間, 両群において各サイトカインの変化は殆どなく, 自己血貯血自体がTh1/Th2バランスに影響を及ぼすことはないと考えられた. 術後はIL-12の漸増がみられTh1への分化促進が示唆されたが, IFN-γレベルは寧ろ漸減した. 特に悪性群でその傾向が強かった. Th2由来IL4, IL-10は何れも低い検出率であった. 一方, 保存血液中のサイトカインの変化については, IL-12レベルは悪性群で低値の傾向にあり, IFN-γは4週以降に漸増したが基本的には不変であった. IL-4, IL-10は殆ど検出されなかった. 「結論」 1. 連続的な自己血採血は貯血期のTh1/Th2バランスに影響しない. 2. 術後のIFN-γの低下は細胞性免疫能の低下を示唆した. 3. 保存血液中の各サイトカインレベルは基本的には不変であり, 輸血後の免疫液能への直接的な影響はないものと思われた. 4. 今後は同種血群との比較検討が必要である. |
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ISSN: | 0546-1448 |