Duffy血液型各表現型におけるglycoprotein Dの遺伝子解析
Duffy血液型抗原は, 免疫沈降法を使って精製される36~46kDaのglycoprotein Dがその抗原性を担っていると考えられてきた. 1993年Chaudhuriらによって, Fy(a-b+)の表現型の骨髄cDNAライブラリーよりglycoprotein DをコードするcDNAはクローニングされた. 今回, このcDNAクローンがDuffyシステムを実際にコードしているか, もしそうなら各表現型はどの様にして決定されているかを明らかにする目的で, Fy(a+b-), Fy(a-b+), Fy(a+b+)各表現型を持つドナーのglycoprotein D cDNAをPCR増幅し, その...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 40; no. 2; p. 307 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.05.1994
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | Duffy血液型抗原は, 免疫沈降法を使って精製される36~46kDaのglycoprotein Dがその抗原性を担っていると考えられてきた. 1993年Chaudhuriらによって, Fy(a-b+)の表現型の骨髄cDNAライブラリーよりglycoprotein DをコードするcDNAはクローニングされた. 今回, このcDNAクローンがDuffyシステムを実際にコードしているか, もしそうなら各表現型はどの様にして決定されているかを明らかにする目的で, Fy(a+b-), Fy(a-b+), Fy(a+b+)各表現型を持つドナーのglycoprotein D cDNAをPCR増幅し, その塩基配列を比較し検討した. 【材料および方法】上記の3表現型を有する健常人から得られたヘパリン加末梢血より, 単核細胞を分離し, 二段階液体培養法あるいはメチルセルロース法を用いて赤血球前駆細胞を培養した. 培養増殖した細胞はacid-guanidinium法でtotal RNAを分離し, 得られたRNAよりoligo d(T)16をプライマーとして, cDNA合成を行った. 次に, Chaudhuriらの報告を基に作製したsenseおよびantiscnse, それぞれ2個ずつのプライマーを用いて, glyooprotein Dのopen reading frame 1017bpを含む1152bpをPCR増幅した. 得られた2本鎖DNAは低融点アガロースを用いて精製し, 非対称PCRにより1本鎖とした後, Dideoxy法で直接塩基配列を決定した. また, 1152bpのPCR産物はpGEM-T vector(Promega社, USA)にsub-cloningした. 【結果および考察】Fy(a-b+)より得られたcDNAの塩基配列は, 報告されたglycoprotein D cDNAに比較して, 5側のnon-coding領域に1塩基の置換を認めたが, coding領域は同一であった. これに対し, Fy(a+b-)のcDNAは第44残基のcodonがGAT(Asp)→GGT(Gly)に変化していた. また, Fy(a+b+)のcDNAのdirect sequenceではこの部分がhetero bandを示し, 両方のalleleの存在を示唆した. glycoprotein Dは, そのアミノ酸配列から9個の膜貫通ドメインを持ちN末端の65残基は細胞外に存在すると予測されている. 従って, 今回見い出した1塩基置換は, N末の細胞外ドメインの抗原性を変化させ得るものと考えられ, glycoprotein D cDNAはDuffyシステムをコードしていることを強く示唆するものである. |
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ISSN: | 0546-1448 |