血液疾患に合併したDIC症例における治療前後の凝固線溶分子マーカーと予後との検討

「目的」DICの病態は, その基礎疾患により, 多様性を認め, それにみあった治療法が必要となる. 白血病では, 骨髄での正常な造血がみられず, 化学療法による骨髄抑制が加わり, 血小板数は著明に減少し, 白血病細胞からのTFやPA, エラスターゼなどによる著しい凝固因子低下や低フィブリノゲン血症を示す, いわゆる線溶亢進・出血型DICを呈する. 濃厚血小板(PC)補充, 凝固因子, 凝固阻止因子, フィブリノゲンなどの補充目的でのFFP投与などの補充療法が重要となるタイプのDICであり, これを怠ると致死的な出血をも併発しかねない. しかし, 現在, ワーファリン投与時のINRのような, D...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 46; no. 2; p. 194
Main Authors 森美貴, 和田英夫, 今井重美, 渡辺利加, 中崎隆弘, 南信行, 磯島明徳, 珠玖洋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.2000
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ISSN0546-1448

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Summary:「目的」DICの病態は, その基礎疾患により, 多様性を認め, それにみあった治療法が必要となる. 白血病では, 骨髄での正常な造血がみられず, 化学療法による骨髄抑制が加わり, 血小板数は著明に減少し, 白血病細胞からのTFやPA, エラスターゼなどによる著しい凝固因子低下や低フィブリノゲン血症を示す, いわゆる線溶亢進・出血型DICを呈する. 濃厚血小板(PC)補充, 凝固因子, 凝固阻止因子, フィブリノゲンなどの補充目的でのFFP投与などの補充療法が重要となるタイプのDICであり, これを怠ると致死的な出血をも併発しかねない. しかし, 現在, ワーファリン投与時のINRのような, DICの治療効果のモニターに適切なマーカーが確立しているとは言い難い. 今回, 我々は, 血液疾患に合併したDIC症例について, 治療前後の凝固線溶分子マーカーを測定し, 経過中の, その変動と予後との関係について検討した. 「対象及び方法」AML:51例, APL:45例, AMMoL:15例, CML:14例, ALL:38例, ML:37例, MDS:10例, 他:16例の血液疾患に合併したDIC226症例を対象に, 治療前, 1,3,5,7,10病日に以下の項目を測定した. Antithrombin(AT), Antiplasm血, ProteinC(PC)活性は合成発色基質法で, TAT,PPIC,D-dimer,SFMC,TF,TFPI,TMは, それぞれ, TAT-test,PIC-test,Dimer-test,Enzymun FM test,TF-ELISA,total-TFPI-ELISA,TM-testキットを用いELISA法にて測定した. 「結果」予後良好群と不良群との比較で, FDP,TAT,PPIC,SFMC,TMとDICscoreは治療不良群で高値を, AT,PC活性は低値を示した. さらにTATとSFMCは, DICの予後良好群で, 治療の経過とともに有意に改善した. 「考察」今回の検討で, TATとSFMCが, DICに対する治療期間や投与量などの決定に対し, 最も優れた指標となりうる可能性が示唆された.
ISSN:0546-1448