未熟児貧血への対応
未熟児貧血の対応について同種血輸血を回避するための対策と, 輸血せざるを得なくなった場合の対応について解説する. 【未熟児貧血の成因】未熟児は, (1)造血栄養素の備蓄が少ない, (2)造血系の調節機構が未熟である, (3)赤血球膜の抗酸化機構が不備である, (4)赤血球の寿命が短い, (5)出血を起こしやすい, (6)総血液量が少ないために採血による失血の影響を受けやすい, などのハンディキャップを抱えているため貧血に陥りやすい. 未熟児貧血は, その原因をもとに, 早期貧血(エリスロポエチンの分泌抑制), 後期貧血(鉄の欠乏), 巨赤芽球性貧血(葉酸の欠乏), 溶血性貧血(ビタミンEの欠乏...
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| Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 2; p. 210 |
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| Main Authors | , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本輸血学会
01.05.2003
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| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0546-1448 |
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| Summary: | 未熟児貧血の対応について同種血輸血を回避するための対策と, 輸血せざるを得なくなった場合の対応について解説する. 【未熟児貧血の成因】未熟児は, (1)造血栄養素の備蓄が少ない, (2)造血系の調節機構が未熟である, (3)赤血球膜の抗酸化機構が不備である, (4)赤血球の寿命が短い, (5)出血を起こしやすい, (6)総血液量が少ないために採血による失血の影響を受けやすい, などのハンディキャップを抱えているため貧血に陥りやすい. 未熟児貧血は, その原因をもとに, 早期貧血(エリスロポエチンの分泌抑制), 後期貧血(鉄の欠乏), 巨赤芽球性貧血(葉酸の欠乏), 溶血性貧血(ビタミンEの欠乏)と失血性貧血に大別される. 【輸血回避策】巨赤芽球性貧血と溶血性貧血はきわめて稀であり, 後期貧血は鉄剤の投与で予防可能なため, 早期貧血と失血性貧血に対する輸血回避策が必要である. いずれの貧血に対しても臍帯の晩期結紮と自己臍帯血輸血の有効性が報告され, 微量検体検査導入などによる採血量の制限や, 遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤の投与も有効である. 【輸血の適応】輸血回避策を行っても, 輸血が必要となる場合がある. 早期貧血の輸血適応に関して, わが国では未熟児早期貧血のガイドラインが提唱されているが, 失血性貧血に対する輸血ガイドラインはなく, AABBが提唱している赤血球輸血の監査基準が指針として使用されることがある. 【副作用回避策】現時点ではMAP加赤血球が輸血される. GVHDとサイトメガロウイルス感染を回避するため15Gyの放射線を照射し, その後, 白血球除去フィルターを通して輸血する. 免疫反応が発現しにくい生後4か月頃までは, 免疫反応による輸血副作用はまれで, ほとんどは製剤の性状による副作用である. 中でも, 腎機能が低い未熟児は, 高カリウム血症をきたしやすいので, 保存期間の短い製剤が必要になることがある. |
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| ISSN: | 0546-1448 |