フィリピンにおいて見い出されたブユ属ウォレスブユ亜属の3新種について

ブユSimulium属ウォレスブユWallacellum亜属は, 雌雄成虫においてMaxillary palpの第3節が第4節より長く, 下胸部および膜質部がともに有毛で, 後脚径節基部1/2または1/3に軸に沿って細い隆起脈を有し, 後脚第1付櫛の先端部の附突起が著しく巨大化し, 蛹では, 腹部第5節から第9節背面に棘列を欠き, 幼虫の頭部腹面のクレフトが吊鐘状を呈するなどの形態的特徴を有する. 吸血習性など生態に関しては不明な点が多い. 本亜属は, 東洋区とオーストラリア区の境界域の島嶼に分布する比較的小さな亜属である. これまで, フィリピンから8種日本(与那国島), 台湾(蘭嶼島)から...

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Published inMedical Entomology and Zoology Vol. 58; no. 2; p. 132
Main Authors 高岡宏行, 大塚靖, 福田昌子, 青木千春
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本衛生動物学会 15.06.2007
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ISSN0424-7086

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Summary:ブユSimulium属ウォレスブユWallacellum亜属は, 雌雄成虫においてMaxillary palpの第3節が第4節より長く, 下胸部および膜質部がともに有毛で, 後脚径節基部1/2または1/3に軸に沿って細い隆起脈を有し, 後脚第1付櫛の先端部の附突起が著しく巨大化し, 蛹では, 腹部第5節から第9節背面に棘列を欠き, 幼虫の頭部腹面のクレフトが吊鐘状を呈するなどの形態的特徴を有する. 吸血習性など生態に関しては不明な点が多い. 本亜属は, 東洋区とオーストラリア区の境界域の島嶼に分布する比較的小さな亜属である. これまで, フィリピンから8種日本(与那国島), 台湾(蘭嶼島)から1種インドネシア(スラウェシ島, セラム島, ビアク島, フローレス島)から2種の計11種が知られている. 今回, 2005年2月にフィリピンのルソン島で採集を行い, 本亜属に属する3新種を得たので報告する. 1種目は, 蛹の呼吸管が4本であるが, 分岐法が(2+1)+1で, 呼吸管基部が球状に膨れているなどの点で, 既知種とは異なる, 2番目の種は, 繭の形態がスリッパ型であるが, 背面の前方突起が庇状に著しく突出しているなど, 既知種に見られない特徴がみられた, 3番目の種は, 繭が靴型である点, S(W.)ogonukiiに似ているが, 蛹の触角鞘に棘列を欠き, 呼吸管の表面に環状の隆起を欠くなど違いがみられる. 1及び2番目の2新種については, ミトコンドリア16SrRNA遺伝子516bpの配列を決め, 既知種を含めた系統解析を行った.
ISSN:0424-7086