術中の大量出血に人工心肺導入により救命できた症例

術中, 肺動脈損傷により急激な大出血に緊急に人工心肺を導入することにより蘇生できた症例を経験した. 〔現病歴〕67歳男性, 肺癌に対し, 右下葉切除術を予定した. 術前の動脈血ガスはpH7.48, PaCO_2 37.4mmHg, PaO_2 63.8mmHg. 呼吸機能検査上, FEV_1.0 52.9%と閉塞性呼吸機能障害を認めた. 〔麻酔経過〕麻酔はプロポフォール, ベクロニウムで導入し, Bronco-Cath(37Fr)を挿管した. プロポフォールの持続投与とフェンタニル, ベクロニウムの間歇投与及び硬膜外麻酔の併用で麻酔を維持した. 麻酔導入後より血圧低下を認めたため, ドパミン3...

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Published in蘇生 Vol. 20; no. 3; p. 268
Main Authors 岡本知恵, 戸部賢, 岡本知紀, 高橋健一郎, 後藤文夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 12.09.2001
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ISSN0288-4348

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Summary:術中, 肺動脈損傷により急激な大出血に緊急に人工心肺を導入することにより蘇生できた症例を経験した. 〔現病歴〕67歳男性, 肺癌に対し, 右下葉切除術を予定した. 術前の動脈血ガスはpH7.48, PaCO_2 37.4mmHg, PaO_2 63.8mmHg. 呼吸機能検査上, FEV_1.0 52.9%と閉塞性呼吸機能障害を認めた. 〔麻酔経過〕麻酔はプロポフォール, ベクロニウムで導入し, Bronco-Cath(37Fr)を挿管した. プロポフォールの持続投与とフェンタニル, ベクロニウムの間歇投与及び硬膜外麻酔の併用で麻酔を維持した. 麻酔導入後より血圧低下を認めたため, ドパミン3~7μg/kg/minを持続静注した. 手術開始約8時間, 右肺動脈に亀裂が生じた. 術野で出血がコントロールできず, 3ルートより輸血と輸液を行い, エフェドリンとメトキサンを投与したが, 血圧は測定不能となり, 脈拍も低下した. 緊急に人工心肺を準備する間, エピネフリン(計80A), ノルエピネフリン(計40A)を投与して循環停止に陥るのを防いだ. 肺動脈損傷より1時間後, 人工心肺開始したが, 瞳孔は全開大していた. 人工心肺補助開始30分後, Vfが出現したため心停止とした. ほぼ同時刻, 両側の肺出血と血尿を認めた. 心停止時間45分, 人工心肺時間3時間10分で離脱したが, 循環作動薬補助下の収縮期血圧40~80mmHg台, PaO_2 90~140mmHg(FiO_2 =1.0)とともに低値であったため, PCPS補助下, 気管挿管のままICUへ入室した. 〔術後経過〕ICU入室6時間後, JCS-100まで回復し, ICU2日目, PCPS抜去から離脱できた. ICU11日目, 気管チューブを抜管し, 13日目に退室した. 〔結語〕術中の大量出血に対し, 緊急の人工心肺導入により対処し救命できた. 術中の緊急事態には, 麻酔科医, ME技師の早急な人員確保及び協力が重要である.
ISSN:0288-4348