閉鎖型回路の導入経緯

【はじめに】1996年より良好な脱血状態を維持するために陰圧吸引補助脱血を導入し, 同時期に充填量の削減, 容易な操作, 安全性の向上を目的に閉鎖型回路の導入を開始した. 当初は部分体外循環で行う胸部下行動脈瘤手術に閉鎖型回路を導入し, 充填量が500mL削減でき, 操作も容易となった. その後, 陰圧吸引補助脱血に用いている開放型回路に静脈貯血槽バイパス回路を装着した. これにより離脱時には閉鎖型回路となるため操作が容易となり, 更に安全性が向上した. 【臨床的および実験的検討】閉鎖型回路を弁置換術などの手術に用いた場合, 脱血回路に混入する気泡が問題となる. そこで, どのような状況で脱血...

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Published in体外循環技術 Vol. 35; no. 2; p. 188
Main Authors 平林則行, 森田雅教, 柴野豊彦, 茂田綾, 富永浩史, 又吉徹, 工藤樹彦, 古梶清和, 四津良平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 01.06.2008
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ISSN0912-2664

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Summary:【はじめに】1996年より良好な脱血状態を維持するために陰圧吸引補助脱血を導入し, 同時期に充填量の削減, 容易な操作, 安全性の向上を目的に閉鎖型回路の導入を開始した. 当初は部分体外循環で行う胸部下行動脈瘤手術に閉鎖型回路を導入し, 充填量が500mL削減でき, 操作も容易となった. その後, 陰圧吸引補助脱血に用いている開放型回路に静脈貯血槽バイパス回路を装着した. これにより離脱時には閉鎖型回路となるため操作が容易となり, 更に安全性が向上した. 【臨床的および実験的検討】閉鎖型回路を弁置換術などの手術に用いた場合, 脱血回路に混入する気泡が問題となる. そこで, どのような状況で脱血回路に気泡が混入するのか, 開放型回路の脱血回路に気泡検出器を用いて観察を行った. その結果, 気泡は循環血液量が少なくなり, 脱血回路の陰圧が強くなると, 脱血カニューレより混入する事が観察された. また, 脱血回路の陰圧を弱くしたり, 容量付加を行う事で解消することを確認した. 次に, 送血フィルター, バブルトラップ, オートベントを脱血回路に装着し, 脱血回路に混入する気泡除去の方法を実験で検討した. その結果, どの方法でも気泡除去は可能であった. 【サクション血の分離】ディデコD903の貯血槽を用いて, CABGと弁置換でサクション血の分離が可能であるか検討した. その結果, CABGでは可能であったが, 弁置換では静脈貯血槽の血液レベル維持が困難な場合もあった. 【閉鎖型回路の操作】閉鎖型回路では脱血回路の圧力の把握が重要である. 陰圧が強い場合, 遠心ポンプの操作で対処するか, 補液で対処するかなどの操作は開放型回路用いた臨床の場で経験を積んだ. 【閉鎖型回路の症例】On pump beating CABGから閉鎖型回路を導入した. その後, JMS社製閉鎖チャンバーやメドトロニック社製Resting Heart Systemを用いて弁置換, 更に新生児のセントラルシャント術に閉鎖型回路を用いている. 【まとめ】現在, 一番の問題はベント血の処理である. この問題を解決し, 出来る限り多くの術式に閉鎖型回路を用いて, 人工心肺による侵襲を少なくしたい.
ISSN:0912-2664