アメーバ性大腸炎の一例
症例は59歳, 男性高脂血症, 狭心症などで通院中であったが, 平成11年11月頃より『便の出が悪い』『便が細い』などの症状が出現平成12年1月には血便も認めるようになった. このため2月26日に大腸内視鏡検査を施行したところ, 盲腸に汚い白苔に覆われた浅い不整形の潰瘍が多発していた. 直腸にもびらん, 潰瘍を認めた. 盲腸の生検組織中にPAS染色陽性の類円形で泡沫状の胞体を有する, 栄養型赤痢アメーバの虫体を多数認め, アメーバ性大腸炎と診断した. 便培養では病原性細菌を認めなかった. メトロニダゾール1500mg/日10日間の内服治療を行い, 治療後, 症状は消失した. 約2ヵ月後の大腸内...
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| Published in | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 51; no. 3; p. 219 |
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| Main Authors | , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
北関東医学会
01.05.2001
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| Online Access | Get full text |
| ISSN | 1343-2826 |
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| Summary: | 症例は59歳, 男性高脂血症, 狭心症などで通院中であったが, 平成11年11月頃より『便の出が悪い』『便が細い』などの症状が出現平成12年1月には血便も認めるようになった. このため2月26日に大腸内視鏡検査を施行したところ, 盲腸に汚い白苔に覆われた浅い不整形の潰瘍が多発していた. 直腸にもびらん, 潰瘍を認めた. 盲腸の生検組織中にPAS染色陽性の類円形で泡沫状の胞体を有する, 栄養型赤痢アメーバの虫体を多数認め, アメーバ性大腸炎と診断した. 便培養では病原性細菌を認めなかった. メトロニダゾール1500mg/日10日間の内服治療を行い, 治療後, 症状は消失した. 約2ヵ月後の大腸内視鏡検査では潰瘍, びらんは消失しており, 盲腸に軽度の発赤を認めるのみであった. 生検でも赤痢アメーバを認めなかった. 赤痢アメーバ感染症は本邦では, 戦後, 減少傾向にあったが, 1979年以降ふたたび増加傾向を示している. 感染の原因として国外感染, 男性同性愛者間の感染, 知的障害者施設での集団感染などが注目されている. 本症例では同性愛行為の既往はなく, HIV抗体も陰性であった. また, 海外渡航歴もなく, 感染の原因は不明であった. 盲腸, 直腸に潰瘍性病変を有するアメーバ性大腸炎の一例を経験し, メトロニダゾールによる治療が有効であった. 近年, 増加傾向にあることを考慮すると, 大腸の潰瘍性病変を認めた場合には, 鑑別疾患として本症を念頭におく必要があると考えられた. |
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| ISSN: | 1343-2826 |