小児に発生した腺様歯原性腫瘍の検討

われわれは小児に発生した腺様歯原性腫瘍について臨床的検討を行った. 対象は1975年から1996年の22年間に当科を受診した本腫瘍10例のうち15歳以下に発生した5例で, 年齢は10歳から13歳に分布し, 性別は男児2名, 女児3名であった. 主訴は病変部の腫脹3例, 歯の萌出遅延2例であった. 発生部位は全例顎骨中心性で, 上顎は2例, 下顎は3例であった. 発現部位は前歯部に限局した症例および前歯部を中心に小臼歯部におよぶ症例が4例, 前歯部から大臼歯部におよぶ症例が1例であった. X線写真では全例類円形の単胞性透過像を示し, その周囲には1層の不透過像がみられ, 病変内部には埋伏歯と砂粒...

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Published in小児口腔外科 Vol. 8; no. 1; p. 61
Main Authors 濱本和彦, 森田章介, 野阪泰弘, 有家巧, 中嶋正博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児口腔外科学会 25.06.1998
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ISSN0917-5261

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Summary:われわれは小児に発生した腺様歯原性腫瘍について臨床的検討を行った. 対象は1975年から1996年の22年間に当科を受診した本腫瘍10例のうち15歳以下に発生した5例で, 年齢は10歳から13歳に分布し, 性別は男児2名, 女児3名であった. 主訴は病変部の腫脹3例, 歯の萌出遅延2例であった. 発生部位は全例顎骨中心性で, 上顎は2例, 下顎は3例であった. 発現部位は前歯部に限局した症例および前歯部を中心に小臼歯部におよぶ症例が4例, 前歯部から大臼歯部におよぶ症例が1例であった. X線写真では全例類円形の単胞性透過像を示し, その周囲には1層の不透過像がみられ, 病変内部には埋伏歯と砂粒状の不透過像が認められた. 腫瘍と埋伏歯との関係は含歯性歯嚢胞と異なり, 歯全体あるいは根尖の一部を除いた大部分が腫瘍内に含まれ, それらの歯種は犬歯が最も多かった. また砂粒状の不透過像は量の少ないものから多いものまであった. これらは本腫瘍に特徴的な所見と考えられた. なお全例に腫瘍に隣接した歯根の離開が認められた. これは腫瘍が徐々に顎骨を膨隆させると共に, 歯根を圧迫し移動させるためと思われた. 処置は全例摘出術を施行した. 腫瘍が厚い被膜を有していたため摘出は容易で, 現在まで再発は認めていない.
ISSN:0917-5261