外傷性一次性脳幹損傷の予後
従来, 外傷性一次性脳幹損傷はdiffuse brain damageの部分現象であり, その予後はきわめて不良とされている. しかし, われわれは頭部外傷直後より重篤な意識障害があり, 四肢運動, 眼症状などより明らかな脳幹部病巣が疑われる症例の中に, CT上まったく異常所見がないか, あるいは脳幹部のみに小出血を示し, 長期間の遷延性昏睡の後, 徐々に改善を認め, 良好な予後を呈する症例があることに注目している. 今回はこれらの症例の臨床的検討を行ってみた. <対象>最近経験した7例の症例に受傷時の臨床所見, CT所見, ABR所見および長期間の臨床経過を検討した. また一部の...
Saved in:
| Published in | 蘇生 Vol. 6; p. 72 |
|---|---|
| Main Authors | , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本蘇生学会
01.05.1988
|
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0288-4348 |
Cover
| Summary: | 従来, 外傷性一次性脳幹損傷はdiffuse brain damageの部分現象であり, その予後はきわめて不良とされている. しかし, われわれは頭部外傷直後より重篤な意識障害があり, 四肢運動, 眼症状などより明らかな脳幹部病巣が疑われる症例の中に, CT上まったく異常所見がないか, あるいは脳幹部のみに小出血を示し, 長期間の遷延性昏睡の後, 徐々に改善を認め, 良好な予後を呈する症例があることに注目している. 今回はこれらの症例の臨床的検討を行ってみた. <対象>最近経験した7例の症例に受傷時の臨床所見, CT所見, ABR所見および長期間の臨床経過を検討した. また一部の症例ではMRI所見を検討した. <結果>7例の受傷直後のJapan Coma Scaleは200~300で, 6例でdecerebrate postureが認められ, 5例に眼位異常が存在した. また5例には著しいvital signの異常があり, ドーパミンによる血圧維持や気管切開などによる長期の呼吸管理が必要であった. しかし, CTでは異常所見が認められないものが4例あり, 3例では脳幹部小出血を認めるのみであった. 急性期ABRを施行したものは3例あり, 1例は正常で2例は異常所見を呈した. 臨床経過では受傷時の昏睡は約1週間~3カ月遷延したが, その後徐々に改善し, 6カ月~1年後には, 全例Japan Coma Scaleが0~2となった. またMRIはCTより明瞭に脳幹部病巣を示した. <結論>従来, きわめて予後不良といわれていた外傷性一次性脳幹損傷の中には, 受傷直後のきわめて重篤な臨床症状にもかかわらず, 予後良好な症例があり, 急性期におけるcareがその予後を決定する重要な因子と考えられた. |
|---|---|
| ISSN: | 0288-4348 |