左心壁在血栓からの多発性の動脈塞栓が原因と思われる急性多臓器不全の1症例
左心壁在血栓は心筋梗塞や心不全に続発して起こり, 時に致死的な塞栓症を引き起こす. 今回, 我々は心房細動, 心不全に続発した左心壁在血栓から多発性の動脈塞栓を起こしたと考えられる症例を経験した. 症例は45才, 男性. 平成8年10月より心房細動の診断で内服治療中の患者. 平成9年5月30日, 全身倦怠感が出現し入院. 肝障害, 慢性膵炎の診断にて点済治療を受けていた. 6月13日, 突然意識レベルが低下, ショック状態に陥り, 当院集中治療部に搬送された. 来院時血圧80/42mmHg, 心拍数170~200/min(不整), 意識レベル(JCS)200, 体温39.4℃, 四肢末梢に皮下...
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Published in | 蘇生 Vol. 16; no. 3; p. 200 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
01.09.1997
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | 左心壁在血栓は心筋梗塞や心不全に続発して起こり, 時に致死的な塞栓症を引き起こす. 今回, 我々は心房細動, 心不全に続発した左心壁在血栓から多発性の動脈塞栓を起こしたと考えられる症例を経験した. 症例は45才, 男性. 平成8年10月より心房細動の診断で内服治療中の患者. 平成9年5月30日, 全身倦怠感が出現し入院. 肝障害, 慢性膵炎の診断にて点済治療を受けていた. 6月13日, 突然意識レベルが低下, ショック状態に陥り, 当院集中治療部に搬送された. 来院時血圧80/42mmHg, 心拍数170~200/min(不整), 意識レベル(JCS)200, 体温39.4℃, 四肢末梢に皮下出血斑を多数認めた. 当院来院時すでに心不全, 急性肝腎不全の状態であった. 心電図上は心房細動で高度な頻脈を呈していた. 心不全と高度な発熱が認められたため感染性心内膜炎を疑い心エコーを施行. 左室駆出率の高度な低下と左心室内に3.4×1.6cmの血栓様エコーが認められた. 急激に起こった意識障害, 肝不全, 腎不全, 四肢の皮下出血斑の原因として心内血栓からの多発性の動脈塞栓が疑われた. 頭部CT, MRIでは脳梗塞が, 体部CTでは腎に多発性に低吸収値域が認められた. 呼吸循環系のサポートに加え, 血漿交換を含めた血液浄化法や高気圧酸素療法を行いながら現在治療中であるがいまだ, 肝不全, 腎不全から離脱できていない. 心内血栓形成の危険因子, 多発性の動脈塞栓の初期症状, 治療等について若干の文献的考察を加え報告する. |
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ISSN: | 0288-4348 |