糖尿病教室を利用した糖尿病の心理療法

「目的」合併症の発症, 進展を予防して人生のQOLを維持するためには, 糖代謝管理が必須である. このことは糖尿病患者に, 一生続く治療の継続と, 生活そのものの変換と, 自分自身が治療の主体となり責任者になることを強要する. 糖尿病特有のこの心理的負担を理解し評価することが糖尿病患者の心理的援助に必要であると考え, 糖尿病教室を利用した方法を試みたので報告する. 「方法」2週間, 22講座の糖尿病教室の中で1講座を臨床心理士が受け持つ. 数名でのフリートーキングにて自由に感情を表現しあい, CMIテストにより心理状態を評価する. CMIは身体的自覚症状と精神的自覚症状を自分で点数化するテスト...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 36; no. 11; p. 804
Main Author 宮崎博子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1999
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ISSN0034-351X

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Summary:「目的」合併症の発症, 進展を予防して人生のQOLを維持するためには, 糖代謝管理が必須である. このことは糖尿病患者に, 一生続く治療の継続と, 生活そのものの変換と, 自分自身が治療の主体となり責任者になることを強要する. 糖尿病特有のこの心理的負担を理解し評価することが糖尿病患者の心理的援助に必要であると考え, 糖尿病教室を利用した方法を試みたので報告する. 「方法」2週間, 22講座の糖尿病教室の中で1講座を臨床心理士が受け持つ. 数名でのフリートーキングにて自由に感情を表現しあい, CMIテストにより心理状態を評価する. CMIは身体的自覚症状と精神的自覚症状を自分で点数化するテストで, 全体的把握がしやすく, 質問が身体症状から始まるために抵抗感が少ない. 特別に援助が必要な患者を見つけ出し, さらに詳しい心理テストと個別カウンセリングを行い, 心療内科医や精神科医へのコンサルトも適宜行う. 「結果」2年1ヵ月間で329人が糖尿病教室を受講し, 273人がCMIを受けた. テストの拒否や, 自分が異常視されているという負い目や苦痛の訴えはなかった. ほぼ全例が一生続く食事療法への不満と苦痛を訴えた. CMIでは, 「憂鬱」「おびえ」等の8項目が0.4~6.6%であるのに対し, 「易怒性」のみが25.6%と特に高く, 納得できない憤りが内在するものと推察された. 「まとめ」1)以上の結果から, 一生を糖尿病と共に生きる現実が了解でき, 疾病の受容が十分できているとはいえない心理状態が想像された. 2)当院の方法では, 心理療法が糖尿病教室の一環として行われるため, 導入にあたって患者の抵抗感や屈辱感に抵触することが少なく, 評価や援助が容易であった.
ISSN:0034-351X