術前自己血貯血患者のQOLを高める工夫

自己血輸血療法の施行目的が単に同種血輸血副作用の回避であるという点のみが強調されるならば,自己血輸血は患者にとって苦痛を伴う一種の強制的行為となりかねず,必ずしも周術期のQOLの向上にはつながらないと考えられる. 自己血はすべての患者が保有する貴重な自己資源であり,この唯一無二の自己資源を積極的に活用する医療の自給という意識が患者と術者の双方において発生し高められてこそ,患者に優しい自己血輸血療法の施行が可能であり,自然の医療として定着し,患者のQOLの向上にもつながるものと考えられる. 演者らは平成2年3月に鹿児島県内の有志とともに「鹿児島自己血輸血療法研究会」を発足させ,県内の自己血輸血療...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 1; p. 92
Main Authors 新名主宏一, 中村宏志, 吉田雅司, 岩村弘志, 吉永光裕, 横山俊一, 白尾一定
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.03.1997
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ISSN0546-1448

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Summary:自己血輸血療法の施行目的が単に同種血輸血副作用の回避であるという点のみが強調されるならば,自己血輸血は患者にとって苦痛を伴う一種の強制的行為となりかねず,必ずしも周術期のQOLの向上にはつながらないと考えられる. 自己血はすべての患者が保有する貴重な自己資源であり,この唯一無二の自己資源を積極的に活用する医療の自給という意識が患者と術者の双方において発生し高められてこそ,患者に優しい自己血輸血療法の施行が可能であり,自然の医療として定着し,患者のQOLの向上にもつながるものと考えられる. 演者らは平成2年3月に鹿児島県内の有志とともに「鹿児島自己血輸血療法研究会」を発足させ,県内の自己血輸血療法の普及化を図ってきたが,今日までの約6年間の経験のなかで見いだした貯血患者のQOLの高揚につながる若干の工夫について検討したので述べてみたい. 自己血貯血患者のQOLを高める工夫:(1)輸血用血液の選択についてのインフォームド・コンセントを口頭のみならず,分かりやすいパンフレットを作成して実施すること. (2)貯血に対して不安の強い患者には体験による理解をすすめること. (3)患者用の貯血計画表を作成し,貯血量とHb値の推移を記載することにより,自らの赤血球造血能を確認させること. (4)貯血期間中の生活指導と造血剤の服薬指導を丁寧に施行すること. (5)採血は必ず熟練者が施行すること. (6)VVRを生じやすいような患者の身体状況(空腹,消化管検査後,前夜不眠など)の際の貯血は避けること. (7)採血速度を極力抑制し,VVRの発生予防につとめること. (8)採取終了後の血液バッグを患者に提示し,患者名,血液型,採血量を確認させること,等. 以上のような工夫を凝らして施行した最近の自己血輸血患者のQOLについてアンケート調査結果をもとに報告してみたい.
ISSN:0546-1448