ネフローゼ症候群で発症した膵acinar cell carcinomaとS状結腸癌の同時性重複癌の1切除例

症例は52歳の男性. 蛋白尿にて入院. 入院時尿中アルブミン値5.92g/日と高値で, 血清アルブミン値1.9g/dlと低値でネフローゼ症候群と診断された. 腹部超音波およびCT検査にて膵腫瘍を認め, 悪性が疑われた. また便潜血陽性のため, 注腸造影X線検査および大腸内視鏡検査を施行し, S状結腸癌を認めた. 高度のネフローゼ症候群の合併のため膵頭十二指腸切除術とS状結腸切除術の併施は手術侵襲が大きく, 術後合併症をきたす危険が高いと考え, 尾側膵亜全摘とS状結腸切除術を併施し術中左腎生検を行った. 組織学的には膵はacinar cell carcinomaと診断され, 結腸癌は深達度sm,...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 31; no. 5; pp. 1126 - 1130
Main Authors 初野, 剛, 久留宮, 隆, 草川, 雅之, 津田, 真吾, 国場, 良和, 山中, 秀高, 末永, 昌宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.05.1998
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.31.1126

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Summary:症例は52歳の男性. 蛋白尿にて入院. 入院時尿中アルブミン値5.92g/日と高値で, 血清アルブミン値1.9g/dlと低値でネフローゼ症候群と診断された. 腹部超音波およびCT検査にて膵腫瘍を認め, 悪性が疑われた. また便潜血陽性のため, 注腸造影X線検査および大腸内視鏡検査を施行し, S状結腸癌を認めた. 高度のネフローゼ症候群の合併のため膵頭十二指腸切除術とS状結腸切除術の併施は手術侵襲が大きく, 術後合併症をきたす危険が高いと考え, 尾側膵亜全摘とS状結腸切除術を併施し術中左腎生検を行った. 組織学的には膵はacinar cell carcinomaと診断され, 結腸癌は深達度sm, n (-) の高分化腺癌であった. 術後2年目の現在, 再発はないが, ネフローゼ症候群は治療中である. ネフローゼ症候群と悪性腫瘍の合併は良く知られているが, 膵癌や重複癌との合併例は今までに報告がなくまれな症例と思われた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.31.1126