巨大な肝内門脈肝静脈短絡を伴った特発性門脈圧亢進症の1例

特発性門脈圧亢進症に巨大な肝内門脈肝静脈短絡を合併した稀な1例を報告する.症例は56歳女性,全身倦怠感,四肢振戦を主訴に入院.超音波検査,X線CTにて右門脈枝より右肝静脈,さらに下大静脈へと屈曲蛇行する肝内門脈肝静脈短絡を認め,上腸間膜動脈造影門脈相にて確診された.肝静脈造影では,肝静脈枝相互間吻合を認め,しだれ柳状を呈していた.肝静脈楔入圧は172mmH2Oであった.肝組織像は,門脈が狭小化し,門脈周囲の円形線維化と異常血行路を認め,特発性門脈圧亢進症の特徴を示した.以上より,肝内門脈肝静脈短絡を伴った特発性門脈圧亢進症と診断した. 本症例の肝内門脈肝静脈短絡が先天性か後天性かは明らかではな...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in肝臓 Vol. 37; no. 8; pp. 440 - 446
Main Authors 辻本, 達寛, 中野, 博重, 辻井, 正, 吉治, 仁志, 福井, 博, 福居, 健一, 中島, 祥介, 松村, 雅彦, 小鴬, 秀之, 小泉, 雅紀, 菊川, 政次
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 25.08.1996
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.37.440

Cover

More Information
Summary:特発性門脈圧亢進症に巨大な肝内門脈肝静脈短絡を合併した稀な1例を報告する.症例は56歳女性,全身倦怠感,四肢振戦を主訴に入院.超音波検査,X線CTにて右門脈枝より右肝静脈,さらに下大静脈へと屈曲蛇行する肝内門脈肝静脈短絡を認め,上腸間膜動脈造影門脈相にて確診された.肝静脈造影では,肝静脈枝相互間吻合を認め,しだれ柳状を呈していた.肝静脈楔入圧は172mmH2Oであった.肝組織像は,門脈が狭小化し,門脈周囲の円形線維化と異常血行路を認め,特発性門脈圧亢進症の特徴を示した.以上より,肝内門脈肝静脈短絡を伴った特発性門脈圧亢進症と診断した. 本症例の肝内門脈肝静脈短絡が先天性か後天性かは明らかではないが,特発性門脈圧亢進症の病期が進展した結果,肝内門脈肝静脈短絡部以外の門脈血流が減少し,門脈圧の上昇に伴い肝内門脈血流の短絡部へのシフトが生じ,短絡部が一層巨大化したものと考える.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.37.440