乳児の黒色性神経外胚葉性腫瘍(MNTI)の1例

乳児の黒色性神経外胚葉性腫瘍(MNTI)は1918年にKrompecherによって最初に紹介された稀な疾患である. Mosbyらによる195例の文献のreviewによると, 大多数は6ヶ月未満の乳児に発症し, 性差は見られず, 発生部位の多くは頭頸部領域, 主として上顎である. 病変は着色性あるいは非着色性の外向性歯肉腫瘍として発現することもあれば, しばしば関連歯の転移を伴い顎骨中心性に発現することもあり, 骨梁への浸潤性を示し極めて急速に増大する一面を有している. 本報告の目的は下顎に発生した乳児の黒色性神経外胚葉性腫瘍(MNTI)のCT所見の検討である. 初診時CT所見では 1)右側下顎...

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Published in歯科放射線 Vol. 38; no. 3; pp. 213 - 214
Main Authors 小山純市, 小林富貴子, 檜木あゆみ, 林孝文, 伊藤寿介, 米持浩子, 朔敬
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 30.09.1998
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ISSN0389-9705

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Summary:乳児の黒色性神経外胚葉性腫瘍(MNTI)は1918年にKrompecherによって最初に紹介された稀な疾患である. Mosbyらによる195例の文献のreviewによると, 大多数は6ヶ月未満の乳児に発症し, 性差は見られず, 発生部位の多くは頭頸部領域, 主として上顎である. 病変は着色性あるいは非着色性の外向性歯肉腫瘍として発現することもあれば, しばしば関連歯の転移を伴い顎骨中心性に発現することもあり, 骨梁への浸潤性を示し極めて急速に増大する一面を有している. 本報告の目的は下顎に発生した乳児の黒色性神経外胚葉性腫瘍(MNTI)のCT所見の検討である. 初診時CT所見では 1)右側下顎乳犬歯部に乳犬歯の顕著な唇側転移と唇側への著名な骨膨隆および軽度の舌側膨隆を伴った軟組織病変を認めた. 2)その遠心に隣在する第一乳臼歯歯胚下方の軟組織は拡大し乳犬歯部と同様の病変の存在が示唆された. 3)さらに両者の間に槽間中隔の残存が認められた. そして切除時の手術所見では乳犬歯部の病変とその遠心に位置する第一乳臼歯歯胚を含む病変との間に連続性はなく, 両者の病変の間に槽間中隔が残存していた. 摘出物の病理所見では, 線維性間質の増生を伴いメラニン顆粒を含む2相性の細胞集団(上皮様細胞およびリンパ球様細胞)による増殖が認められ, これにより病理診断はMNTIとされた. 乳犬歯部と第一乳臼歯部に同様の病理所見を認め, 残存する槽間中隔の骨梁への腫瘍の浸潤も認められたが, 両者の間に明かな連続性を認めなかった. 以上より本症例は右側下顎の乳犬歯部および第一乳臼歯歯胚部に多発性に発生したMNTIである可能性が高いと考察した. その後, 切除時に腫瘍浸潤の見られた近遠心断端より再発を認め, retrospectiveな検討でも歯胚単位で発生した可能性が示唆された. しかし, 下顎での発生率は6%とされ, 我々の渉猟し得た範囲では多発性を指摘した報告は認められなかった.
ISSN:0389-9705