糖質コルチコイドにおけるラット線条体ドパミン神経代謝の変化
糖質コルチコイドは中枢モノアミン神経代謝に影響をおよぼして様々な中枢神経症状を引き起こすことが知られている. また, 糖質コルチコイド投与により虚血性神経細胞障害が増悪することを以前我々も報告している. グルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の過剰な放出が障害を増悪させる一つの要因である. ドーパミンも興奮性神経伝達に関与する. 本研究では脳マイクロダイアリシス法で細胞外ドーパミン濃度におよぼすデキサメタゾンの効果を検討した. また虚血によるドーパミン放出におよぼす効果も検討した. 方法;脳マイクロダイアリシス法で細胞外液中のドーパミンとその代謝物の変化を検討した. 実験1;非虚血時のドーパミン...
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Published in | 蘇生 Vol. 20; no. 3; p. 264 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
12.09.2001
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | 糖質コルチコイドは中枢モノアミン神経代謝に影響をおよぼして様々な中枢神経症状を引き起こすことが知られている. また, 糖質コルチコイド投与により虚血性神経細胞障害が増悪することを以前我々も報告している. グルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の過剰な放出が障害を増悪させる一つの要因である. ドーパミンも興奮性神経伝達に関与する. 本研究では脳マイクロダイアリシス法で細胞外ドーパミン濃度におよぼすデキサメタゾンの効果を検討した. また虚血によるドーパミン放出におよぼす効果も検討した. 方法;脳マイクロダイアリシス法で細胞外液中のドーパミンとその代謝物の変化を検討した. 実験1;非虚血時のドーパミン代謝におよぼすデキサメタゾンの効果を検討した. 体重300gのウンスター系ラットをハロタンと笑気で麻酔し, 膜長1mmのマイクロダイアリシスプローブを脳定位装置を用いて右線条体に挿入した. リンゲル液を毎分2μLで灌流させ, 2時間の安定時間後, デキサメタゾンを腹腔内に投与した. デキサメタゾン投与1時間前より15分ごとの灌流液を回収し, ドーパミンと代謝物をHPLC電気化学法で定量した. 実験2;虚血によるドーパミン代謝の変化におよぼすデキサメタゾンの効果を検討した. 生食またはデキサメタゾンを脳室内に投与した. 1時間後にシリコンコーティングしたナイロン糸を内頸外頸分岐部より16mm挿入し, 右中大脳動脈起始部を閉塞した. 20分後に血流を再開させた. 20分ごとの灌流液を回収した. 結果;ハロタンと笑気による麻酔下では回収液中のドーパミン濃度は0.12pg/Lでした. デキサメタゾン投与によりこの値は3倍に増加した. 次に虚血によるドーパミン濃度の変化を示す. 虚血負荷により回収液のドーパミン濃度は70倍になった. デキサメタゾン群では虚血による増加がさらに更新し, 最大値は対照群の21倍に達した. 結論;糖質コルチコイドは線条体でのドーパミン神経活動を促進することがわかった. 虚血によるドーパミン放出も促進させ, これが糖質コルチコイドによる虚血性神経細胞障害増悪の一つの要因であると思われる. |
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ISSN: | 0288-4348 |