ラット咽喉頭の酸味刺激による嚥下誘発効果

【目的】嚥下誘発困難者において, 酸味による刺激が嚥下誘発に有効であるという臨床的報告があるが, その仕組みについては種々議論がある. 本実験ではラットを用いて, 咽頭および喉頭の酸味刺激による嚥下誘発効果を調べるとともに, 嚥下神経である上喉頭神経の酸味刺激に対する応答を記録して, 酸味による嚥下誘発効果について検討した. 【方法】ウレタン麻酔下の成熟ラットを背位に固定し, 気管カニューレおよび食道カニューレを挿入した. ポンプを用いて口腔から挿入したチューブから刺激液を流し, 咽頭から喉頭にかけての領域を刺激し嚥下を誘発した. 嚥下の生起は顎舌骨筋の筋電図, 喉頭の挙上を指標とした. 上喉...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 42; no. 5; p. 470
Main Authors 梶井友佳, 真貝富夫, 北川純一, 高橋義弘, 田口洋, 山田好秋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 30.08.2000
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ISSN0385-0137

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Summary:【目的】嚥下誘発困難者において, 酸味による刺激が嚥下誘発に有効であるという臨床的報告があるが, その仕組みについては種々議論がある. 本実験ではラットを用いて, 咽頭および喉頭の酸味刺激による嚥下誘発効果を調べるとともに, 嚥下神経である上喉頭神経の酸味刺激に対する応答を記録して, 酸味による嚥下誘発効果について検討した. 【方法】ウレタン麻酔下の成熟ラットを背位に固定し, 気管カニューレおよび食道カニューレを挿入した. ポンプを用いて口腔から挿入したチューブから刺激液を流し, 咽頭から喉頭にかけての領域を刺激し嚥下を誘発した. 嚥下の生起は顎舌骨筋の筋電図, 喉頭の挙上を指標とした. 上喉頭神経の神経線維束から神経活動を記録し, 積分応答の大きさを比較した. 蒸留水, 酢酸, NaClを刺激液として用いた. 【結果】蒸留水, NaCl, 酢酸はともに嚥下を誘発したが, 酢酸は蒸留水, NaClよりも強い刺激効果を示し, 嚥下回数は他の刺激液より著しく多く, 嚥下の潜時は短かった. 上喉頭神経を切断すると, 溶液刺激による嚥下は殆ど生じなかった. 上喉頭神経の神経応答記録では, 酢酸による刺激は刺激開始直後から上喉頭神経に顕著な応答を誘起した. 【考察】咽喉頭の酸味による刺激は強い嚥下誘発効果を持つこと, また酸味は上喉頭神経を興奮させ, その活動の増大が嚥下誘発を促進することが分かった.
ISSN:0385-0137