失神で来院しtorsades de pointesを繰り返したQT延長症候群の1症例
torsades de pointes (TdP)は多くは数秒~数十秒で自然停止する多形性心室頻拍であるが, 時に心室細動に移行し, 突然死を来すことも知られている. この度失神発作で来院され, 入院後TdPを繰り返したQT延長症候群の1症例を経験したので報告する. 〔症例〕62歳, 女性. パチンコ屋にて突然失神し, 当院救急外来に搬入された. 頭部CTは異常なかったが, 心電図にて著明なQT時間の延長(QTc680msec)と, 低K血症(K2.8)のため, TdPによる失神も考え, 意識レベルはJCS1まで回復していたが, ICU入室となった. その約2時間後, 突然TdPとなり完全に意...
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| Published in | 蘇生 Vol. 19; no. 3; p. 250 |
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| Main Authors | , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本蘇生学会
12.10.2000
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| ISSN | 0288-4348 |
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| Summary: | torsades de pointes (TdP)は多くは数秒~数十秒で自然停止する多形性心室頻拍であるが, 時に心室細動に移行し, 突然死を来すことも知られている. この度失神発作で来院され, 入院後TdPを繰り返したQT延長症候群の1症例を経験したので報告する. 〔症例〕62歳, 女性. パチンコ屋にて突然失神し, 当院救急外来に搬入された. 頭部CTは異常なかったが, 心電図にて著明なQT時間の延長(QTc680msec)と, 低K血症(K2.8)のため, TdPによる失神も考え, 意識レベルはJCS1まで回復していたが, ICU入室となった. その約2時間後, 突然TdPとなり完全に意識消失, けいれん様の動きとなったため, 直流通電(DC)200J実施. いったん改善後も数回TdPを繰り返し, 一時は心室細動となり, DCをのべ4回行い, 同時にMgの静注を行って, 以後TdPは消失した. 数日前までのべ14日間甘草を含む漢方薬を内服されており, この時点では薬剤性低K血症による後天的なQT延長と考え, 心拍数上昇にて対応する目的で体外式ペースメーカーも挿入したが, 血清Kの補正とともにQT時間も改善し, TdPの再発もなかったため, 作動は不要であった. 血清Kが正常化後も, QTc520msecと延長し, 家族歴でも妹が24歳で, 弟が15歳で突然死, 次男にもQT延長を認めたため, 先天性QT延長症候群と診断された. その後岡大循環器内科に転科されたが, EPS時にもTdPは誘発されず, βブロッカー内服でTdP再発もなく経過良好である. 〔考察〕自験例は日曜に来院されすぐに十分な情報も得られなかったが, 救急室でQT延長をTdP移行の可能性がきわめて高い『切迫緊急症』と判断して厳重に対応したことが, 結果的に救命できた大きな要因と考えられる. 先天性QT延長症候群でのTdPはβブロッカーが第一選択とされるが, 自験例では低K血症が大きく関与し, 電解質補正やMgの静注が効果的であったと思われた. 〔結語〕先天性QT延長症候群に漢方薬による低K血症が契機となって生じたTdPの1例であるが, 失神患者ではQT時間延長への厳重な対応が重要である. |
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| ISSN: | 0288-4348 |