出血性潰瘍に対するフィブリン局注による内視鏡的止血法の新しい試み

出血性潰瘍に対する治療法は, エタノール, HSEなどの局注や金属クリップによる内視鏡的止血法の開発により良好な成績が得られるようになった。しかし, 太い露出血管からの噴出性出血, 多臓器障害や血液凝固異常などの背景因子を有する潰瘍から出血症例では, 継続止血が困難なこともある。この状態に対して, 全身管理が重要であっても, 出血性ショックを改善できなければ, 有効な治療を進めることができない。治療の第一歩として内視鏡的止血が理想的である。このような病態について, 組織学的な検索の結果や成因を考慮しつつ, 生理的組織接着剤の局法を試みたところ, 出血部位が確認でき局注が可能であった症例では,...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 14; no. 3; pp. 399 - 411
Main Authors 中村, 紀夫, 藤田, 誠一郎, 松田, 兼一, 前田, 宜包
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 30.06.1994
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem1993.14.399

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Summary:出血性潰瘍に対する治療法は, エタノール, HSEなどの局注や金属クリップによる内視鏡的止血法の開発により良好な成績が得られるようになった。しかし, 太い露出血管からの噴出性出血, 多臓器障害や血液凝固異常などの背景因子を有する潰瘍から出血症例では, 継続止血が困難なこともある。この状態に対して, 全身管理が重要であっても, 出血性ショックを改善できなければ, 有効な治療を進めることができない。治療の第一歩として内視鏡的止血が理想的である。このような病態について, 組織学的な検索の結果や成因を考慮しつつ, 生理的組織接着剤の局法を試みたところ, 出血部位が確認でき局注が可能であった症例では, 継続止血を得ることができた。理論的には有効と考えられても実際の使用法に問題があったが, 生食サンドウイッチ法により容易にフィブリン接着剤を局注することが可能となった。本法を内視鏡的止血法に加えることにより, 止血法の適応拡大と治療成績の向上が望まれるものと思われる。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem1993.14.399