微生物攻法 (MEOR) のための油層内細菌活動に関する調査

MEORにおいて圧入する微生物の油層内での増殖を抑制する可能性のある細菌群を明らかにすることを目的として, 油層にモラセス水溶液を圧入し, 油層内で活性化される細菌群をPCR-RFLP法により調査した。その結果, モラセスの希釈水として使用した地下水中に棲息(せいそく)する細菌群の中で, 特定の腸内細菌かそれに近縁な種が油層内で優勢に増殖することがわかった。このことから, MEORのために圧入する微生物の油層内での動態を把握するには, 地下水中に元々棲息するこれらの細菌群の動態も併せて考慮すべきであることが明らかになった。 また, 圧入微生物に要求される競合増殖性を明らかにするため, 油層内で...

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Published in石油学会誌 Vol. 43; no. 4; pp. 274 - 285
Main Authors 藤原, 和弘, 矢澤, 仁徳, 洪, 承燮, 田中, 信治, 大塚, 牧子, 千田, 佶, 中谷, 一記, 榎本, 兵治, 前角, 繁之
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 公益社団法人 石油学会 01.07.2000
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ISSN0582-4664
DOI10.1627/jpi1958.43.274

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Summary:MEORにおいて圧入する微生物の油層内での増殖を抑制する可能性のある細菌群を明らかにすることを目的として, 油層にモラセス水溶液を圧入し, 油層内で活性化される細菌群をPCR-RFLP法により調査した。その結果, モラセスの希釈水として使用した地下水中に棲息(せいそく)する細菌群の中で, 特定の腸内細菌かそれに近縁な種が油層内で優勢に増殖することがわかった。このことから, MEORのために圧入する微生物の油層内での動態を把握するには, 地下水中に元々棲息するこれらの細菌群の動態も併せて考慮すべきであることが明らかになった。 また, 圧入微生物に要求される競合増殖性を明らかにするため, 油層内で活性化された細菌群のモラセスを利用した増殖性を評価した結果, 前述の地下水中に棲息する細菌群は, モラセスを利用して108CFU/ml以上にまで増殖する能力を有していることが明らかになった。これらのことから, MEORフィールドテストにおいて油層に圧入する微生物は, まず地下水中に棲息する細菌群に対して優勢に増殖することが必要であることが示唆された。次に, モラセスの圧入によって引き起こされる油層内の細菌活動の変化およびそれに伴う岩石浸透率ならびに圧入流体の流路の変化の観点から, 高浸透性領域に介在する油層水に棲息している細菌群や油層岩常在細菌等に対して優勢に増殖することも必要であることが推察された。 さらに, モラセスの圧入によって油層内で活性化された細菌群のMEOR機能の評価結果より, 確実な原油増進回収効果を得るには, MEOR実施対象油層の特徴や微生物が有するMEOR機能に応じて微生物の機能とその効果を発揮させる場所を制御し, 微生物を効果的に利用することが極めて重要であることを指摘した。
ISSN:0582-4664
DOI:10.1627/jpi1958.43.274