食道癌周術期の輸血療法-自己血輸血

【目的】食道癌周術期管理の安全性と血液製剤使用量の減少を目的として, (1)自己血輸血, (2)術中, 術後の輸血輸液管理のマニュアル化, (3)鏡視下手術とくに用手補助腹腔鏡下手術HALSの導入を図ってきた. そこで, これらの方策が同種輸血の回避率や使用量にどのような影響を及ぼしたかを検討したので報告する. 【方法】1997年から自己血輸血を導入した. 貯血の方法は, 毎回400ml採血のあとMAPとFFPに分離し, 更に自己血フィブリン糊作成用にクリオレシピテートを分離保存した. 貯血量の目標は1200mlとした. 術中輸液量は10ml/kg/時とし, PPFを1000ml追加した. 術...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 2; p. 198
Main Authors 藤田博正, 末吉晋, 田中寿明, 笹原弘子, 的野吾, 白水和雄, 佐川公矯
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.2003
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ISSN0546-1448

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Summary:【目的】食道癌周術期管理の安全性と血液製剤使用量の減少を目的として, (1)自己血輸血, (2)術中, 術後の輸血輸液管理のマニュアル化, (3)鏡視下手術とくに用手補助腹腔鏡下手術HALSの導入を図ってきた. そこで, これらの方策が同種輸血の回避率や使用量にどのような影響を及ぼしたかを検討したので報告する. 【方法】1997年から自己血輸血を導入した. 貯血の方法は, 毎回400ml採血のあとMAPとFFPに分離し, 更に自己血フィブリン糊作成用にクリオレシピテートを分離保存した. 貯血量の目標は1200mlとした. 術中輸液量は10ml/kg/時とし, PPFを1000ml追加した. 術中術後はHb>10g/dlを維持するようにMAPを輸血し, 使い切った後はHB<8g/dlで同種輸血を開始した. 術後1日目は2.5ml/kg/時, 2日目は2.0ml/kg/時, 3日目は1.5ml/kg/時, 4日目は1.0ml/kg/時で細胞外液製剤の輸液をおこない, 4日前後から経腸栄養を開始した. 自己FFPは術後毎日1packづつ3~4日間投与し, Alb<2.5g/dlでアルブミン製剤を投与した. 2000年からHALSを導入した. 1997~2001年に当科で食道癌切除術が施行された168例について貯血の有無, 貯血量, 出血量と術中輸血量, 同種輸血回避率について検討した. 【結果】168例中136例(81%)に貯血が行われた. 貯血不能の理由は術前放射線化学療法, 低栄養貧血, 肝硬変などであった. 周術期の同種血輸血回避率は66%であった. 年次別では1997年より61%, 58%, 64%, 71%, 88%であり, 回避率は増加している. 貯血例で術中に同種輸血が行われたのは9例(5%)のみであった. 入院期間を通じての同種血輸血の理由は, 術後出血や敗血症など手術合併症が主因であった. 自己血輸血の導入以前は術中82%, 入院期間中では100%の症例で同種血輸血がなされていた. 1997年以後の年間の同種血MAP, FFP使用量は, それ以前と比べ約1/6に減少した. 【まとめ】食道癌手術における自己血輸血, 輸血輸液のマニュアル化, 鏡視下手術の導入は血液製剤使用量を減少させる可能性がある.
ISSN:0546-1448