HTLV-Iと発がん

成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia: ATL)はヒトT細胞性白血病ウイルスI型(human T-cell leukemia virus type I: HTLV-I)により惹起されるCD4陽性T細胞の悪性腫瘍である.HTLV-Iは生体内において,ウイルスの複製よりもむしろ感染細胞のクローナルな増殖によりそのコピー数を増やし,その副産物としてATLを発症すると考えられる.HTLV-IのpX領域にコードされるTaxはその多彩な機能からHTLV-I感染細胞の不死化に中心的な役割を果たすと考えられてきたが,患者由来の新鮮ATL細胞では,しばしば発現できなくなっておりATLの発...

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Published inウイルス Vol. 56; no. 2; pp. 241 - 249
Main Authors 松岡, 雅雄, 安永, 純一朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ウイルス学会 22.12.2006
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ISSN0042-6857
1884-3433
DOI10.2222/jsv.56.241

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Summary:成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia: ATL)はヒトT細胞性白血病ウイルスI型(human T-cell leukemia virus type I: HTLV-I)により惹起されるCD4陽性T細胞の悪性腫瘍である.HTLV-Iは生体内において,ウイルスの複製よりもむしろ感染細胞のクローナルな増殖によりそのコピー数を増やし,その副産物としてATLを発症すると考えられる.HTLV-IのpX領域にコードされるTaxはその多彩な機能からHTLV-I感染細胞の不死化に中心的な役割を果たすと考えられてきたが,患者由来の新鮮ATL細胞では,しばしば発現できなくなっておりATLの発症機序における意義は不明であった.近年,HTLV-Iのマイナス鎖にコードされるHBZが発見され,白血化に重要であることが示唆されている.また,ATLの発症には長い潜伏期間を伴うことから,ウイルス遺伝子,宿主ゲノム変化,宿主の免疫能などが関与する多段階の発がん機序が存在すると考えられる.
ISSN:0042-6857
1884-3433
DOI:10.2222/jsv.56.241