播種性血管内凝固症候群における補体–凝固系を制御する糖鎖タンパクの機能的役割と創薬ターゲットとしての可能性

「1. 補体-凝固経路クロストーク」 補体経路は, 古典, 第二, レクチン経路から構成され, 各経路は補体第3成分(C3)の開裂を促すことで, 補体第5成分(C5)の開裂及び膜侵襲複合体(C5b-9)が形成される. C5b-9は細胞膜を穿孔させ, 結果として組織障害を惹起する. 加えて, C3及びC5の開裂によって生じたC3a, C5a(アナフィラトキシン)は細胞性免疫を活性化させ, 強力な炎症反応を惹起する. これらの反応は, 宿主から細菌等の異物排除に寄与するが, 自己組織への障害を回避するため, 細胞表面には多様な糖鎖が発現する. 膜補体制御因子(CReg)と呼ばれる糖鎖タンパクは,...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 143; no. 9; pp. 707 - 712
Main Author 水野, 智博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.09.2023
日本薬学会
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ISSN0031-6903
1347-5231
DOI10.1248/yakushi.23-00112

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Summary:「1. 補体-凝固経路クロストーク」 補体経路は, 古典, 第二, レクチン経路から構成され, 各経路は補体第3成分(C3)の開裂を促すことで, 補体第5成分(C5)の開裂及び膜侵襲複合体(C5b-9)が形成される. C5b-9は細胞膜を穿孔させ, 結果として組織障害を惹起する. 加えて, C3及びC5の開裂によって生じたC3a, C5a(アナフィラトキシン)は細胞性免疫を活性化させ, 強力な炎症反応を惹起する. これらの反応は, 宿主から細菌等の異物排除に寄与するが, 自己組織への障害を回避するため, 細胞表面には多様な糖鎖が発現する. 膜補体制御因子(CReg)と呼ばれる糖鎖タンパクは, 補体による自己組織への攻撃から保護する作用を持つ. CD46, CD55, CD59が代表的なCRegであり, 自己免疫疾患の発症・進展のみならず, 腫瘍に対する免疫反応にも関与するなど, 多彩な役割を示す.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.23-00112