取扱い環境により容易に転移するチアミン塩化物塩酸塩の擬似結晶多形の識別手法

「緒言」結晶多形は, 同じ化合物であっても分子間相互作用や固体表面分子の違いがみられ, 医薬品においては安定性の変化, 溶解速度の変化などにより, 薬理効果・毒性に影響を与える可能性がある. したがって, 結晶多形を迅速かつ正確に識別できる分析手法の開発は重要であり, 以前より様々な方法が研究されている. チアミン塩化物塩酸塩を, 臭化カリウム (potassium bromide ; KBr) 錠剤法によりIRスペクトルを測定したところ, 同一のサンプルを測定してい にもかかわらずスペクトルに再現性が認められず, 特にC-O伸縮振動に帰属されるピークにおいて違いが顕著であった. チアミン塩化...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 142; no. 3; pp. 295 - 302
Main Authors 山田, 彩乃, 村尾, 渚, 佐藤, 明啓, 谷本, 剛, 藤本, 雄三, 中川, ゆかり
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.03.2022
日本薬学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0031-6903
1347-5231
DOI10.1248/yakushi.21-00206

Cover

More Information
Summary:「緒言」結晶多形は, 同じ化合物であっても分子間相互作用や固体表面分子の違いがみられ, 医薬品においては安定性の変化, 溶解速度の変化などにより, 薬理効果・毒性に影響を与える可能性がある. したがって, 結晶多形を迅速かつ正確に識別できる分析手法の開発は重要であり, 以前より様々な方法が研究されている. チアミン塩化物塩酸塩を, 臭化カリウム (potassium bromide ; KBr) 錠剤法によりIRスペクトルを測定したところ, 同一のサンプルを測定してい にもかかわらずスペクトルに再現性が認められず, 特にC-O伸縮振動に帰属されるピークにおいて違いが顕著であった. チアミン塩化物塩酸塩は結晶水が関与した結晶多形として, I型 (1水和物) , II型 (0.5水和物) 及びIII型 (無水和物) の3種の擬似結晶多形 (結晶多形中に溶媒和物を含むもの) が知られており, Fig.1に示したように取扱い環境の影響を受けて直ちに転移することが報告されている.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.21-00206