統合失調症と終末糖化産物

「I はじめに」統合失調症は幻覚や妄想などの陽性症状, 感情鈍麻や意欲減退などの陰性症状を主な症状とし, 長期に経過する精神疾患である. 生涯罹患リスクは約1%と身近な疾患であり, 思春期から青年期にかけてほとんどが発症する. また, 標準化死亡率は一般人の約3倍に及び, 期待される平均余命は健常人より20年も短い. しかしながら, 本疾患の原因や病態は解明されておらず, 質の高いバイオマーカーも見出されていない. 従って, 診断における異種性の問題が常に議論され, 病態に根差した生物学的治療法もない. 我々は, 統合失調症の原因や病態を解明するために多発家系に着目して遺伝子解析を行い, 末梢...

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Published in信州医学雑誌 Vol. 68; no. 1; pp. 23 - 30
Main Authors 吉川, 茜, 鳥海, 和也, 新井, 誠, 宮下, 光弘, 鈴木, 一浩, 堀内, 泰江, 糸川, 昌成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 信州医学会 10.02.2020
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ISSN0037-3826
1884-6580
DOI10.11441/shinshumedj.68.23

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Summary:「I はじめに」統合失調症は幻覚や妄想などの陽性症状, 感情鈍麻や意欲減退などの陰性症状を主な症状とし, 長期に経過する精神疾患である. 生涯罹患リスクは約1%と身近な疾患であり, 思春期から青年期にかけてほとんどが発症する. また, 標準化死亡率は一般人の約3倍に及び, 期待される平均余命は健常人より20年も短い. しかしながら, 本疾患の原因や病態は解明されておらず, 質の高いバイオマーカーも見出されていない. 従って, 診断における異種性の問題が常に議論され, 病態に根差した生物学的治療法もない. 我々は, 統合失調症の原因や病態を解明するために多発家系に着目して遺伝子解析を行い, 末梢血で終末糖化産物(Advanced glycation end-products; AGEs)が上昇することを突き止めた. また, ビタミンB6による抗AGEs療法の治験を行うなど精力的に臨床展開を進めてきた. 本稿では, 統合失調症とAGEsの関連についてこれまでの知見を総括し, ビタミンB6の治療可能性についても記述する.
ISSN:0037-3826
1884-6580
DOI:10.11441/shinshumedj.68.23